アキレス腱に「石で殴られた衝撃」 有望なキャリアを襲った”残酷な瞬間”「もうダメだ、無理だ」【インタビュー】
負傷と向き合い続けた大津祐樹氏のプロサッカー人生
元日本代表MF大津祐樹氏の16年間に及ぶプロサッカー人生は、負傷と向き合い続けるキャリアでもあった。「突然、ふくらはぎを石で殴られたような衝撃が走った」と振り返るアキレス腱断裂は、ステップアップを見据えていた最中で厳しい現実を突き付けた。「もうダメだ、無理だ…」。絶望感に駆られた離脱期間、「正直、代表の試合を見たくなかった」と当時を語るなかで、いかにして苦難の日々を乗り越えたのか。「いい経験だったと、今なら思える」。笑顔でそう言葉にするまでの軌跡を辿る。(取材・文=城福達也) 【写真】大津祐樹、“鹿島10番時代”の秘蔵ショット「なんだか不思議」 ◇ ◇ ◇ 2011年7月にドイツの名門ボルシアMGへと加入した大津氏だったが、ブンデスリーガでトップ4入りするチームの元では、なかなか出場機会に恵まれなかった。一方、元ドイツ代表MFマルコ・ロイスらトップタレントの同僚たちと、毎日激しいトレーニングを重ねた。ハイレベルな環境で身につけた強度の高さを、大活躍したロンドン五輪で証明した。 成長の手応えを、欧州のピッチでも示したいーー。五輪後に芽生えた思いから、当時オランダ1部だったVVVフェンロに移籍した。チームは同年に降格したものの、主力としてリーグ戦22試合に出場。クラブからも期待の表れとして、翌年に背番号「10」を託された。 ここから結果を残してステップアップしていく。モチベーションは最高潮だった。しかし、描いていたキャリアビジョンは突然、狂わされることになった。2013年12月15日に行われたリーグ第21節MVVマーストリヒト戦で、利き足である右足のアキレス腱を断裂する重傷を負った。 「突然、ふくらはぎを石で殴られたような衝撃が走った。その瞬間、やばいやつだと絶望感に襲われた。足を確かめたら、グラグラになっていた。もうダメだ、無理だ…と感じた」 突きつけられた現実は、あまりに残酷だった。 「ピッチを去る時は、頭が真っ白だった。そこから少し冷静になった時に、自分が置かれた立場、目指していた目標が現実的に厳しくなったことを悟って…コンディションが上がってきていた最中での出来事だったので、本当に落ち込みました」 2013年2月にはアルベルト・ザッケローニ元監督の元でA代表に初選出されていた。五輪の勢いをそのままに、A代表でも地位を確立していく…そのはずだった。しかし、望まぬ形でキャリアの分岐点を迎えることになった。 「ケガの大きさやタイミングも含めて、あのアキレス腱断裂が自分のキャリアに大きな影響を与えたのは確か。代表にも選出されて、これからだという時だったので。同世代が代表で活躍し始めた当時は、正直、代表の試合を見たくなかった」