梶原悠未「ロスは笑顔で終わりたい」電車出勤、専任講師で日本ウェルネススポーツ大で講義
自転車競技のトラック種目女子オムニアムで2021年東京五輪銀メダリストの梶原悠未(TEAM Yumi)が20日、昨年より専任講師を務める日本ウェルネススポーツ大(茨城県北相馬郡)で特別講義を行った。拠点の静岡・伊豆市から始発で出勤。午前9時半開始の1限、2限で教壇に立ち、スポーツプロモーション学を専攻する男女111名の学生に「スポーツ選手のメンタルトレーニング」と題して講義した。 「(講義を行うのは)今回で3回目。私自身、競技をするのも、教えたりするのも好きなので、きょうも1か月半をかけて(パワーポイントなど資料を)準備しました。パリ五輪の後、カウンセリングを受けるなど、学んできたことがたくさんあった。それを皆さんにお伝えし、壁にぶつかったり、苦しいことがあった時の解決策として、きょうの授業を思い出してくれたらいいなと思います」。 講義では「ご機嫌な時に何をしたいと思うか」など、自身に問うよう呼びかけた。東京五輪、パリ五輪の経験をもとに、自分自身を知り、どんな状況でも「自分のご機嫌」を手放さないすべを身につける重要性を説いた。 4種目で競うオムニアム。今夏のパリ五輪では1種目目のスクラッチで16位と出遅れ、最終結果は17位に終わった。五輪で2大会連続のメダルを目指していただけに、五輪後は失意に陥り、約2週間は自転車から離れた。8月19日からメンタルのカウンセリングを受けるなど、9月の全日本選手権を目指したが、同大会では接触による落車があり、座骨神経を負傷。今季のレース出場はなくなり、「もう死にたいとも思った」と前を向けなくなった。 そんな中、梶原に勇気を与えたのは、1学年下の弟だった。パリ五輪前に発覚したがんを取り除く手術や闘病生活。周囲を驚かせるほど前向きに取り組む姿を目にし「(健康の)私が(気持ちを)落としてばかりではいられない」。週に1~3度のカウンセリングを受けながら、トレーニングでは新たにウエイトリフティングを取り入れるなど、再出発を切った。 “結果”を追い求め過ぎて、心技体をそろえられなかったパリ五輪。28年ロサンゼルス大会へ、白い紙に自身の思いを記し、気持ちを整理した。「戦術をワクワクしながら考えて、怖がらずに、失敗を恐れずに挑戦できる人」などと4年後の目指すべき姿を思い描いた。まずは来年2月のアジア選手権でレース復帰を目指す。「一喜一憂せずにやりたい。ロスは笑顔で終わりたい」と梶原。苦楽を知るエースが、笑顔を取り戻した。
報知新聞社