三浦春馬さん出演のドラマ「太陽の子」15日放送 思い巡らせたい戦争の悲惨さと平和の尊さ
終戦の日、15日に放送が迫る三浦春馬さん出演のドラマ「太陽の子 GIFT OF FIRE」(NHK総合ほか、午後7時30分)が注目を集めている。史実をベースにした青春群像劇で、第二次世界大戦下の日本人科学者たちの苦悩を描く。主人公は柳楽優弥演じる石村修で、海軍から命じられた核エネルギーを使った新型爆弾開発のための実験に携わる。三浦さんはその弟、裕之役。そして2人から思いを寄せられる幼馴染みの朝倉世津を、有村架純が演じる。なお同作はBS8Kでは先月先行放送され、ドラマ版とは異なる視点で描く劇場版も2021年に公開される。
日本の軍部に存在した原子爆弾開発計画
作・演出の黒崎博氏が番組公式サイトに寄せたコメントによると、「一冊の古い日記を手にしたことが、始まりでした。そこには科学に情熱を注ぎ、青春を燃焼させる若い研究者の日常が書かれていました。原子物理学という新しい学問へのじりじりするような憧れと、一方でそれを兵器に転用することへの疑問。その姿は知らない誰かではなく、私たちと同じように生き方を探し続ける等身大の若者として迫り、僕は心を揺さぶられました。どうしてもその青春の形を物語にしたくなり、シナリオを書きました」とのこと。そして、テーマに強く共鳴してくれた人々によって作られ、海外からも大勢のスタッフが参加、合宿しながら撮り進めたという力作だ。 戦時下、日本でも軍部に複数の原子爆弾開発計画が存在していたといわれる。一つは大日本帝国陸軍の「二号研究」であり、もう一つが大日本帝国海軍の「F研究」で、日本の原子物理学者がほぼ総動員されたという。今作のベースとなったのは後者で、ミッドウェー海戦の大敗以来、主力艦船を失い危機感を募らせた海軍が原子爆弾の研究開発再開を企てたが、海軍には人材も設備もないことから京都帝国大学に研究を依頼することになったといわれている。 まさに今作の主人公・石村(柳楽)は、京都帝国大学の物理学研究室で原子の核分裂について研究しており、海軍から命じられた核エネルギーを使った新型爆弾開発のための実験を続けている。空襲の被害を防ぐための建物疎開で家を失った幼なじみの世津(有村)は修の家に居候することになるが、そこに三浦さん演じる修の弟・裕之が戦地から一時帰宅、再会を喜ぶ。爆弾開発の実験が思うように進まないなか、研究室のメンバーは研究の継続に疑問を持ち始める。そして裕之が再び戦地へ行くことになった矢先、広島に原子爆弾が落とされる。共演はほかにイッセー尾形、山本晋也、國村隼、田中裕子ら。
戦争に翻弄されていく若者たちの姿
三浦さんは、役作りのため髪を刈り上げて撮影に臨み、戦時下という困難な時代にどう生きるか葛藤する若者を熱演しているという。 戦後75年となり、戦争体験者が高齢となるにつれ後世に伝えていく難しさもどんどん増していく。そんな中、ドラマや映画が果たす役割は今後大きくなる一方だ。国籍や文化、価値観の違いに関わらず、いまも世界は多くの問題を抱えている。三浦さんはじめ出演者たちが全身全霊で届ける戦争に翻弄された若者たちの姿を通して、あらためて戦争の悲惨さや平和の尊さについて思いを巡らせたい。 (文:志和浩司)