渡り鳥50種を23年追跡、大規模調査で「鳥たちの複雑な社会」が見えてきた、最新研究
異なる種が社会的ネットワークを形成か、米国5カ所50万超の記録を分析
米国では今まさに、何十億羽もの鳥たちが南の越冬地に向かって羽ばたいている。鳥の渡りは毎年恒例の出来事だが、その範囲と規模があまりに大きく、完全に理解するのは難しい。しかしこのたび、渡り鳥の生態をかつてないほどのぞき見られる最新の研究結果が発表された。 【動画】渡り鳥と一緒に空を飛ぶ!絶景映像 8月13日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された研究では、米国北東部と五大湖地域にある渡り鳥の中継地5カ所で集めた標識調査の記録50万点以上を分析したところ、異なる種の鳥たちが渡りの間、永続的な関係を築いていることが明らかになった。なお、こうした関係は生態学的に意味があり、気候変動などの人為的なかく乱によって脅かされる可能性があるという。 渡りの中継地では、特定の種間にひそかなつながりがあるのではないかと長く考えられてきた。今回の研究では、23年間におよぶ渡りの調査で収集された鳴き鳥50種のデータを用い、鳥類の複雑な社会的ネットワークを解明した。 鳥の渡りを研究するため、研究者はしばしば、渡りの中継地として知られている場所で、渡り鳥を網で捕獲し、番号の付いた小さなバンド(足環)を脚に装着する。こうした取り組みの一部から、鳴き鳥の社会的なつながりのヒントが浮かび上がってきた。 例えば、毎年春になると、ハゴロモムシクイ(Setophaga ruticilla)、シロオビアメリカムシクイ(Setophaga magnolia)、ワキチャアメリカムシクイ(Setophaga pensylvanica)が20~45分の間に同じ網の同じ部分で捕獲される。 また、秋に同じ場所を訪れると、やはり同じ時間帯に同じ網で、ノドジロシトド(Zonotrichia albicollis)、ルビーキクイタダキ(Regulus calendula)、キヅタアメリカムシクイ(Setophaga coronata)が必ず捕獲される。これはすべて、これらの鳥が疲労や空腹を感じたときにばらばらに休んでいるのではなく、あるパターンに従っていることを示唆している。 「渡りのルートに沿って動物たちを追跡するのは簡単ではありません」と今回の研究に参加したエミリー・コーエン氏は話す。コーエン氏は米メリーランド大学環境科学センター(UMCES)で動物の渡りや回遊を研究している。 「しかし、実際に観察してみると、これらすべての種が共存しています。海では、同じ海流に魚類や海洋哺乳類がいて、空には、あらゆる昆虫や鳥、コウモリがいます」 「ある意味、彼らが交流していないと考える方がばかげています」