人と人がサウナを起点につながる、“ととのう”ための別邸
◆サウナ「KAUNIS OLO」
さて、ではいよいよサウナへ。フィンランド語でBeautiful Feelingという意味を持つ「KAUNIS OLO」と名付けられたサウナは手前に洗面スペース、右に水風呂、左にととのいスペース、奥にサウナ室というつくり。特筆すべきは、サウナ室の壁が耐熱性の高いガラス素材のため、内と外で会話が可能というところ。入浴ターン8分の人も、10分の人も会話が途切れず、また視線も遮断されないため、シームレスなコミュニケーションが可能です。
なにより奥のサウナ室から手前に流れてくるような高さを違えた構造も美しい。サウナ室で座っている人と、洗面スペースで立って水を飲んでいる人の視線がきっちり合うなど、緻密な計算が成されています。
サウナの楽しさを描いたマンガ『サ道』にもモリザネ社長として登場する森實さんらしく、ディテールまでこだわりぬいた「KAUNIS OLO」は早くもサウナーたちの注目を集めています。が、あくまで個人宅ですので、誰でもが入れるわけではありません。
選ばれし者が集まり、膝と膝を突き合わせて密談(?)する様はどこか戦国時代の武将たちが茶室で茶の湯に興じていた様を思い起こさせます。
サウナを出たら、有紀子夫人がダイニングテーブルに切った炉でお茶を点ててくれていました。なるほど、サウナ=茶室という発想はあながち間違いでもないのかも。
最近では「KAUNIS OLO」ブランドのタオルを製作し、ゲストに配ったり、白樺やクランベリーなどフィンランドゆかりの食材を使用したサウナソーセージを開発したという森實夫妻。
サウナという余暇に行う、いわば“遊び”にも本気で取り組み、そこで拡がるネットワークを基にさらに成長していくという、ふたりのサ活に成功者の秘訣を学んだように思います。
● 森實敏彦(もりざね・としひこ)
株式会社タマディック代表取締役社長。1973年愛知県生まれ。1996年慶應義塾大学卒業後、外資系IT企業を経て、2000年に祖父が創業した株式会社タマディック入社。2002年、代表取締役社長に就任。2021年、自社ビルを坂茂氏のデザイン・設計で木質免振構造に建て替えた際、最上階にサウナ「LUOVA SAUNA」を誕生させ、社員の健康意識と社員同士のコミュニケーションに劇的な改善を図る。フィンランド大使館公認のフィンランドサウナアンバサダー、マスターオブフィンランドサウナにも認定。
写真/長谷川直紀 文・編集/秋山 都(Web LEON)