「本来の株式の楽しさを伝えたい!」 60年間、株式市場と付き合って得た“現実と事実” まずスタートしてみよう
どの企業に入るのか。大学時代の友人のアドバイスもあり、日本生命保険にした。 理由は単純で、当時の株式投資のバイブル的存在だった東洋経済新報社の「会社四季報」をパラパラめくると、いろんな会社の大株主として日本生命の名前が登場したからであり、その株式運用の担当者になりたいと思ったからである。 日本生命に入ったあと、株式売買の担当部門に配属されることはなかった。今から考えると、それがラッキーだったのかもしれない。
金融の流れや経済全体の動きを観察できる部門に配属され、上場企業のアナリストを経験し、株価を計測するモデルなどを作り、最終的には日本生命全体のポートフォリオ(株式や債券を含め、どの資産をどの程度の割合で保有するのか)を企画する部門、財務企画部に配属された。 この日本生命での仕事において、長期に株式を保有することの長所と短所を知った。企業業績と株価との関係も理解できたと思う。株式の長期保有は望ましいものの、企業を選ぶ必要があることも学んだ。
結局のところ、株価は経営者の才覚に大きく左右される。会社での29年間の経験において、株式市場は短期的には何回も大きく下落した。その中、優れた経営者がいる企業は、その経営者の指揮の下、株価下落をいち早くかつ悠然と乗り切った。 ■「株式は危険」広がった風潮を憂う 会社を辞めて大学に転じ、証券市場や証券投資の分析に携わった。純粋の経済学の分野から評価すると、とくに日本においては「証券はあやしげな世界」だった。
最近になり、「資産運用立国」などのキャッチフレーズもあって、証券の世界にもようやく光が当たってきたようだが。 小学生から中学生にかけてのころ、「銀行よさようなら、証券よこんにちは」と言われたのを覚えている。このキャッチフレーズはその後、何回も言い換えを繰り返し、今の「資産運用立国」に至っている。 しかしその中身はというと、現時点においても、「株式で資産を築く」最初の一歩を踏み出した程度にすぎない。むしろ筆者が株式と付き合ってきた60年の間に、小学生のころの知人宅のような「資産家は株式を保有する」という常識が崩れ去った。