<対中政策は日本立国の基本>「白か、黒か」の視点から脱却を
去る10月27日に投開票のあった衆議院議員選挙で、自民党・公明党をあわせた与党が過半数の233議席を割り込み、立憲民主党と国民民主党が大躍進を遂げた。自民党派閥の政治資金問題、いわゆる「裏金」が大きな争点となり、与党に対する有権者の不信感を示す結果に終わっている。 【画像】<対中政策は日本立国の基本>「白か、黒か」の視点から脱却を 本稿執筆時点(11月6日)で、石破茂首相は連立の拡大や野党との閣外協力を視野に入れているのに対し、立憲民主党の野田佳彦代表は政権交代の意欲を失っていない。特別国会での首相指名選挙の行方が注目を集めている。 もっとも歴史をなりわいとする筆者の関心は、どうも世上とは同じではない。政権交代にかかわらず、日本立国の視座からすれば、もっと重大な問題があるからだ。 つまり日本の対外関係である。それは大統領選後の米国はいわずもがな、当面いっそう重いのは、対中政策に他ならない。 日中間では近年、様々な問題が顕在化してきた。6月に中国・蘇州で発生した日本人母子切り付け事件や9月に深圳で発生した児童刺殺事件は、記憶に新しい。耳目を聳動させたあまり、すわ反日運動の再現か、と報じた向きさえあった。 しかし集団的暴動が主だった従前の反日デモとは、多分に様相・形態が異なる。同列に論じてよいか、軽々に断ずることは難しい。ともかく痛ましい事件が二度と起こらないよう、祈るばかりである。 社会的な事件ばかりではない。政治的な事案も、劣らず重大である。例えば台湾海峡や尖閣諸島、靖国神社の問題など、最も著名である。こちらも反日と同じく、以前から長期にわたりながらも、必ずしも従前と同じ様態だというわけではない。 10月中旬の台湾に対する軍事演習は、またぞろ包囲攻撃と見紛う大規模ながら、かつてない電光石火の実施であった。尖閣諸島周辺では、中国船の領海侵犯がいよいよ日常化・常態化している。日中の抱える長期的な問題は、政治でも社会でも内外の情勢が変化するにともない、その相貌を変えて、いよいよ対処が容易でない。かたや日中民間の経済・交流は、つとに不可分と言ってよいほど、深い関係にある。両者を矛盾・破綻させては、日本の前途も危うい。 そうした観点からすれば、今後起こりうる与野党の政権交代など、ごく小さなファクターである。およそ選挙戦にあるまじき発言になってしまうのは、けだし中国問題では、与野党の別にかかわらず、課題は変わらないからであり、むしろ日本人通有だからである。