センバツV東邦“二刀流”石川の打撃センスは「落合プラス広澤」
センバツ高校野球の決勝戦が3日、甲子園球場で行われ、東邦が習志野を下して30年ぶり5度目の優勝を果たした。わずか1時間30分で終わった決勝は、東邦の「エース・3番・主将」の石川昂弥ワンマンショーだった。試合前、森田泰弘監督が「今日は一人で投げて打ってやってくれ!」と、石川に声をかけたという。 初回一死一塁で外から入ってくるスライダーをしっかりとためてバックスクリーンの右に特大の先制2ラン。さらに5回2死二塁からは、習志野の2番手飯塚脩人のスライダーを引きつけて、今度は、右中間の最前列にダメ押しの2ラン。4打点の活躍で自らのピッチングを援護すると、投げては、ストレートのほとんどが、130キロ台だったにもかかわらず丁寧なコントロールと同じ腕の振りからスライダー、スプリットを落として二塁を踏ませずに3安打の完封劇。3回以降は、体力を温存するためにスリークォーターに腕を下げる器用さで低めを突き決勝という大舞台で石川の名を天下に轟かせた。 「最後は力を出し切るだけと思っていた、それができたと思った。1本目は、打った瞬間いったと思った。2本目は正直いったと思わなかった。入ってくれて良かったと思いました。今は、夢のような時間です」 地元の中日は、ずいぶん前から石川をマークしてきたが、センバツ優勝でプロの評価も急上昇。どのチームも喉から手が出るほど欲しいのは右の大砲。石川は“二刀流”で結果を出しているが、プロ側から見て垂涎の存在となっているのは、その打棒だ。 元ヤクルトのスカウト責任者だった片岡宏雄氏は「二刀流をやらせると中途半端で終わるのが怖い。打者のほうがいい。大谷翔平と比べると馬力が足りない」という。 「センターより右へ2発。あれだけ打てる打者は高校生では最近見たことがない。リストが強いことに加えて、技術がある。強引にフルスイングして引っ張るパワーヒッターではなく、バットに乗せて運んでいる。右方向へ打てるのは、右の大砲がプロで成功する条件。巨人の岡本和真でさえ、5年目になって、やっと膝に体重を乗せて右へ長打を打てるようになったが、石川は、すでにその技術とセンスを持つ。落合博満の技術と、広澤克実のパワーを足して2で割ったような大型野手だ。ピッチャーもバッターもできるのだからセンスの塊だろう。阪神の関係者には怒られるかもしれないが、ただ振っているだけの4番の大山悠輔よりも石川の方が間違いなくセンスがある」