何が飛び出るかわからない“金本阪神劇場”!
金本監督の野球がとびきり面白かった。 3月25日、京セラドーム。敗れた悔しさより、すかっとした爽快感が勝る。 とにかく、これでもか、と仕掛けた。 初回。1番に起用したルーキー、高山俊(22)が三遊間を破って出塁すると、2番に置いた横田慎太郎(20)には、迷うことなく強打を指令した。去年までの和田野球ならば間違いなくバントのケースである。ピッチャーゴロで、ランナーが入れ替わったが、ここでも併殺を許さない横田の足が光った。そして、すぐさま盗塁で走らせた。余裕でセーフである。 得点圏に走者を進めオープン戦打率が1割だった3番のヘイグ。投球を見送るタイミングさえほとんどあっていなかった新外国人、ヘイグの打球が左中間を襲う。横田は、一気に先制ホームを踏んだ。4回に同点に追いつかれると、その裏、先頭打者だった横田は、ショートゴロでヘッドスライディングを敢行。ユニホームを汚した。平凡なショートゴロが、あわやのタイミングだった。結果が欲しくて、すべてのボールを追いかけてしまうバッティングは見てはいられなかったが、その姿勢は良しである。 何が飛び出るかわからない“金本劇場”のハイライトは1点を追う五回である。無死一塁から11年間“埋もれていたキャッチャー“岡崎太一(32)の初球にエンドラン。これが見事にはまって一、三塁とチャンスを広げると、続くピッチャーのメッセンジャーには、この試合、初めてバントのサインを出す。 だが、その初球のバントが、ファウルになると、2球目はバスターのサインに切り替えた。元々、バッティングの悪くないメッセンジャーが、バットに当ててサードゴロとなったが、三塁走者の西岡剛(31)は、“コリジョンルール”を生かしたギャンブルスタートを切るのではなく、逆に帰塁してみせた。だが、これはトリックだった。中日の三塁、高橋周平(21)が併殺を狙って二塁へ送球するのを確認すると、すぐさまスタートを切った。スライディングすることなく、ホームを駆け抜けると、ベンチ前では、金本監督が大喜びで出迎えて西岡のお尻を叩いた。 まだサプライズは終わらない。高山がセンターフライに倒れて、二死になると、続く横田のカウント0-2から、一塁走者に残っていたメッセンジャーが盗塁を仕掛けたのである。 完全にノーマークだった中日の二遊間は、ベースカバーにも入れない。キャッチャーの送球が無人のセカンドベースを抜ける間にメッセンジャーは、一気に三塁を陥れた。 実は、これ、メッセンジャーのサインの勘違いミスだった。それでもベンチでは、金本監督がそのミスを責めることもせず拍手して大笑いしていた。 痛快だ。