トヨタ スターレット1300 3ドアS(昭和53/1978年2月発売・KP61型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト096】
ハードサス装備の「S」はリアルスポーツカー的
走りを支えるサスペンションはフルモデルチェンジに伴って、大きくその構成を変化させている。フロントは一般的なマクファーソンストラットだが、リアは従来のリーフリジッド式から、現代的なコイルスプリングを使用した4リンク・リジット式が新たに与えられることになった。 デフとドライブシャフトを一体としたホーシングを上下2本ずつ4本のリンクで前後方向の位置決めをし、ボディとホーシングを斜めにつなげるラテラルロッドで横方向の位置決めをするというこの形式は「足のいいやつ」で売ったカリーナと同様となる。 ステアリングはラック&ピニオン方式だ。現在では当たり前の機構だが、実にトヨタが量産車種の分野でこれを採用するのは、トヨタ2000GTを別格とすれば、このスターレットが最初の試みであった。これがスポーティなイメージをさらに印象付けることになる。ブレーキはフロントにディスクブレーキを採用し、安定した制動性能を確保した。 スターレット1300Sの走りは軽量なボディと素直なハンドリング特性に象徴される。このSグレードに装備されたタイヤは他グレードの12インチに対して13インチ、さらにサスペンションもハードなセッティングとされていたため、ワインディングロードでの走りは純粋なスポーツカーに近いフィーリングにまとめられていた。 コーナーでは比較的低速からリアがブレークし始めるため挙動が穏やかで、カウンターが当てやすかった。これがドライバーの制御達成感につながり、どんな場所でも自在に振り回せる自信となっていく好循環を生み出していたのだ。 このハンドリングの素直さに注目したチューナーも多かった。ナンバー付きの車両で行われたワンメイクレースや、オーバーフェンダーやスポイラーなどを装着した当時のTS(グループ4)仕様によるレース、そしてラリーなど、KP61スターレットはモータースポーツ入門車としても絶大な支持を得たのだった。 このクルマでドライビングをマスターしたとか、モータースポーツに興味を持ってジムカーナやダートトライアル、そしてレースやラリーに参戦したという人は少なくない。
トヨタ スターレット1300 3ドアS(KP61型)諸元
●全長×全幅×全高:3725×1525×1370mm ●ホイールベース:2300mm ●車両重量:710kg ●エンジン型式・種類:4K-U・直4OHV ●排気量:1290cc ●最高出力:72ps/5600rpm ●最大トルク:10.5kgm/3600rpm ●トランスミッション:5速MT ●タイヤサイズ:145SR-13 ●新車価格:82万1000円
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