日本人で増えている「食道胃接合部がん」で生存期間の改善を確認 研究で明らかに
食道胃接合部がんとは?
編集部: 今回紹介した研究テーマにもなった食道胃接合部がんについて教えてください。 眞鍋先生: 食道と胃のつなぎ目の部分を食道胃接合部と呼び、食道胃接合部がんは食道胃接合部にできるがんのことです。具体的な定義は、「食道胃接合部の上下2cmの範囲にがんの中心部があるもの」とされています。食道胃接合部がんには、食道がんの性質に近い扁平上皮がんと、胃がんの性質に近い、腺がんに分類されます。早期発見ができた場合は内視鏡で切除することができますが、標準治療は手術です。 ピロリ菌感染者の減少や除菌が普及したことで、日本人の胃がんは減少傾向にあるものの、食道胃接合部がんは増加傾向にあります。原因の1つとして、胃液の逆流が指摘されています。
研究内容への受け止めは?
編集部: オーストラリアのシドニー大学らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 眞鍋先生: 新しい医薬品が患者さんの手に渡るまでには多くの段階を踏む必要があり、その中で特に重要なのが臨床試験です。臨床試験は、新しい薬の効果や安全性を人に対して実際に確かめるための試験で、大きく分けて以下の4つの段階があります。今回の研究はそのうちの3番目、Ⅲ相試験にあたり、新しい薬は本当に効果があり、安全であることを大規模な集団で確認するための最終段階です。Ⅲ相試験では、新しい薬と既存の治療法、またはプラセボを比較し、より効果的で安全な治療法を選ぶためのデータを集めます。 レゴラフェニブという薬は、がん細胞の増殖を抑える働きを持つ分子標的薬の一種です。今回の研究では、レゴラフェニブがすでに治療を受けている難治性の進行胃がんおよび食道胃接合部のがん患者において、生存期間を改善する可能性を示しました。これにより今後、この薬のこのがんに対する使用が承認されると、第Ⅳ相試験(上市後の薬の安全性や新たな効果などをさらに詳しく調べる試験)へと移行していくでしょう。