予想以上の「大勝」で、動き始めた「トランプ2.0」【播摩卓士の経済コラム】
税制を始め法案は、上下両院で可決されなければ成立しません。仮に久々に議会との「ねじれ」が解消すれば、時の政権に大きな力を与えることになるのです。 ■財政拡張で高まるインフレ圧力 超党派の委員会は、トランプ氏の公約をすべて実現すれば、2026年会計度からの10年間で合計7.5兆ドルの財政支出増加につながると試算しています。単純に10で割ると、要は1年に100兆円以上財政支出が増える勘定です。これだけ支出が増えれば、そうでなくても心配なインフレに、再び火をつけかねないと心配する向きもあります。 また財政赤字の増大は、それ自体が金利上昇圧力になるので、インフレと相まって、金利上昇を促すことになりかねません。中央銀行であるFRBが短期金利の利下げを進めているのに、長期金利が上昇しているのは、そうした懸念の表れです。実際にインフレが再燃するにはそれなりに時間もかかるでしょうが、市場が株高・金利高・ドル高で反応していることは、そうした「市場の読み」を示しています。 ■中国に60%など高関税政策 一方、通商政策での「トランプ2.0」の目玉は、高関税政策です。中国からの輸入品に60%もの追加関税をかけるほか、他の国からの輸入品にも10~20%の関税を付加するとしています。日本からの自動車に10%の付加関税がかけられたら、いくら円安が進んだと言っても、大変な打撃です。欧州や日本の株価が下がったのはそうした不安の代弁です。ただ中国への60%関税はともかくとしても、同盟国にどこまでそうした措置をとるかは、今後の交渉次第と見る向きもあります。 しかし、仮にトランプ政権と取引が成立して、直接的に日本に付加関税がかけられなくても、影響は必至です。中国製品に60%もの関税が課せられれば、中国から対米輸出は激減し、中国に部品や資本財を輸出している日本はじめ、アジア各国の企業には大打撃です。 また、中国に進出している日系企業は対米輸出が事実上できなくなるわけですから、生産拠点の移転などサプライチェーンの世界的な組み換えを迫られることにつながります。