”移籍組”が日本人ワンツーを決めた名古屋ウイメンズに見えた日本マラソン界の新しい潮流
今冬のマラソンは高性能シューズの影響もあり、男女ともに好タイムが続出している。 オレゴン世界選手権代表選考会のラストを飾る13日の名古屋ウィメンズも見応えのあるレースになった。 日本記録(2時間19分12秒)を大きく上回る2時間17分台の記録を持つルース・チェプンゲティッチ(ケニア)とロナチェムタイ・サルピーター(イスラエル)に安藤友香(ワコール)と細田あい(エディオン)が挑戦。レースは5km過ぎにチェプンゲティッチがペースメーカーの前に出て、トップを独走する意外な展開になった。しかも2時間20分39秒ペースとなる1km3分20秒で30kmまで引っ張る予定だったペースメーカーは15km過ぎに離脱。安藤と細田はサルピーターの背後でレースを進めるかたちになった。 20kmを前に細田が遅れると、中間点を過ぎてサルピーターがペースアップして、安藤もついていけない。中間点の通過は安藤が1時間9分47秒、細田が1時間9分59秒。ふたりは終盤ペースダウンするが、気温が20度を超えるレースで踏ん張った。 安藤がオレゴン世界選手権の派遣設定記録(2時間23分18秒)を突破する2時間22分22秒で3位。細田は自己ベストを2分以上も短縮する2時間24分26秒で4位に入った。
日本人トップは安藤友香「パリ五輪でメダル目指す」
日本人トップに輝いた安藤は、「たくさんの応援ありがとうございます。強い選手についていくことができず悔しいですけど、最後まで粘れたかなと思います。(チェプンゲティッチに)早い段階で出られたので、世界との差を感じました。自分自身、ベストを尽くして日々の練習をやっていくしかないと思っているので、少しでも近づけるように精進していきたいです。パリ五輪ではマラソンでメダルを目指して頑張りたい」と2024年の五輪を見つめた。 日本人2位の細田は、「今回のレースは第1集団につけるところまで行こうと自分のなかで考えていました。15km過ぎてペースメーカーが外れた後、だんだんペースが上がっていったので、まだまだ力の差はすごいあるなと感じました。自分の納得いく結果ではなかったんですけど、脚を途中で痛めることもなく、今の力は出し切れたかなと思います」と話した。 第1集団にチャレンジして、結果も残した安藤と細谷にはある共通点がある。ともに実業団の移籍を経験しているのだ。 現在27歳の安藤は2019年2月にスズキ浜松AC(現スズキ)からワコールに移籍。同26 歳の細田はダイハツを退社して、今季からエディオンに所属している。 以前は、選手の引き抜き行為を阻止する目的もあり、実業団所属選手の移籍を制限する規 定があった。前所属チームから「円満移籍」の了承を得なければ、移籍先のチームで無期限に実業団登録ができなかったのだ。しかし、公正取引委員会から「独占禁止法違反の可能性がある」との指摘を受けて、近年は移籍が活発化している。