【発達障害の思春期女子】わがままで自己中心的と見られがちなのはなぜ?友達とのトラブルに傷つかないために、この時期に適切な親のサポートとは。療育アドバイザーに聞きました
無理に友人関係を求めないでいい
私が保護者にお伝えしていることは、無理に友人関係を求めないようにすることです。女の子のいじめられる子の特徴に、「一人でいられない子」があります。「最初からいじめられる事を恐れて友人関係をあきらめるなんて」と思われるかもしれませんが、友人関係をあきらめろと言っているわけではなく、以下の理由から、この時期に無理して築く必要はないという考えです。 ①ホルモンバランスの変化 思春期という時期はホルモンバランスが変わり、テストステロンという攻撃性の高いホルモンの分泌量が増えます。テストステロンは一般的に男性ホルモンとされていますが、女性の体内でも重要な役割を果たしています。思春期に入ると、女の子の体内でもテストステロンや他の男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増加します。この時期にいじめや仲間外れが増えるのもそういった体の変化もあるからです。他にも受験に向けた学業が忙しくなるなど余裕もなくなりがちな時期です。この時期の子どもたちは自分と違った物を排除しようとする時期でもあります。 ②本人の傷つきやすさ 大人になると些細な事でも経験の浅い子どもにとっては些細な事がものすごく重要に感じます。例えば友達との約束一つにしても、子どもにとっては重要さが違うのです。大人同士であれば相手のその時の「都合」やその人の「環境」などを考えたりと些細な事は気にしませんが、経験の浅い彼らにとっては一つ一つに傷つく度合いが重いのです。
「トラブルのきっかけはいつも友だち」に傷つかないための親のサポートとは
以上の理由から長い人生を考えると敢えてこの多感な時期に傷つくリスクを負ってまで友人関係を無理に構築する事はあまり得策とは思えません。 「我が子のことを理解してくれる優しい友だちがほしい」と保護者の皆さんは考えます。でも、その考えには「うちの子は障害があるから少し大目にみてほしい」ということも含まれていませんか。「理解してくれる優しい子」というのは、「友だち」ではなく、実はその子にとっての我が子は「都合のいい子」ではないでしょうか。私が運営していた放課後デイサービスでも、シャープペンとか消しゴムとかを勝手に交換されたり、ゲーム機を持ってこさせられて無くされてしまったり…と、友だちから「いいように使われた」ということを皆が経験していました。 本人は自覚していなくても、我が子が都合よく利用されることを望む親はいないでしょう。我が子が「都合のいい子」になってしまいがちということを意識しておかないと、最初は子ども同士のトラブルだったのが、次第にエスカレートして親同士のトラブルに発展したときに大変な苦労をすることになります。 必要なのは友人がいなくても楽しめる活動を見つける事です。その活動を通して同じ仲間や支援者を通じて他者との交流から始め人間関係の構築をしていく事がおすすめです。 学童期はあまり友人関係にこだわらず、本人の好きな物や好きな事を見つけることを、親として支援してあげていただきたいですね。 【記事監修】 藤原美保さん|(株)スプレンドーレ代表 健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。 発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育に力を入れてきた、放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年3月まで運営。2022年5月から、障害のあるお子さんと保護者が通う事ができ、施術中に療育相談を受けられる美容・脱毛サロンLuceを運営。発達障害のお子さんの療育アドバイザーとして相談や療育コンサル、発達障害のお子さんへのオンラインでの性教育を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。
文・構成/HugKum編集部