巨人の「微陽性騒動」が専門家釈明で決着も全球団PCR定期検査実施決定で無症状感染者の対応に不安残る
プロ野球とJリーグによる「新型コロナウイルス対策連絡会議」が8日、オンラインで行われ、専門家チームから6月19日に開幕を控えるプロ野球に対し、全球団の定期的なPCR検査の導入が提言され、その後の12球団代表者会議で同提案を実施することが合意された。会見では、座長の東北医科薬科大の賀来満夫・特任教授から、先日、巨人が坂本勇人、大城卓三の新型コロナウイルス感染時にプレスリリースに使った「微陽性」という言葉の”発信源”は自分であり「医学用語にはない。今後、使わないでいただきたい」との異例の訴えがあった。「微陽性騒動」は決着したが、問題はPCR検査で、同様の無症状感染者が出た場合の対処方法だ。厚労省の指導や当初のプロ野球のガイドラインでは、「退院後、2週間の経過観察が必要」とされていたが、今回は、その期間を見直すことが提言された。本当に感染リスクはゼロなのか。不安を抱えたままプロ野球は開幕を迎えることになりそうだ。
「微陽性は医学的用語ではない。今後使わないで」
9回目を数えた新型コロナウイルス対策連絡会議を終えた後のオンライン記者会見は、専門家チームの座長の異例の”釈明”から始まった。 「事実確認ということでお話しさせていただきます」と切り出した賀来・特任教授は、先日、巨人が坂本、大城の新型コロナウイルス感染を伝えるプレスリリースに使った「微陽性」という言葉について、こう説明した。 「プレスリリースの中に『微陽性』という言葉が出てまいりました。陽性ということをお聞きして『CT値(ウイルス遺伝子量)が、どれくらいの値だったのでしょうか』と確認をさせていただいたところ『40』に近い微量のウイルスの遺伝子量だったということもあって『これは微量な値ですね』と。私は検査の専門医でもありますが、『微陽性』という言葉は医学的にはございません。こういった言い方はないのですが、あくまでも表現として口頭で『微陽性みたいな感じですかね』と言った言葉がプレスリリースの言葉となって載ったということで…『微陽性』というものはなく陽性なんですが…読売巨人さんが作ったのではなく、わたしの会話の中から出た言葉なんです」 つまり坂本、大城のPCR検査の陽性結果にあわてた巨人が専門家である賀来・特任教授に、今後の対応、措置を相談する会話の中で出た「微陽性」という言葉をいかにも医学用語のようにプレスリリースに掲載し、それが広く報じられる結果となったのである。 世間では、まるでメディアの造語のようにも受け取られているが、なんらかの意図をもって巨人が賀来・特任教授の会話の中の言葉を切り取り、あたかも医学用語のようにプレスリリースに掲載したことが発端なのだ。 さらに賀来・特任教授は、「ぜひ、ご理解をいただいて、その言葉は使わないでいただきたい、と私からもお願いします」と、今後、無症状感染者を表す場合の医学用語として「微陽性」を使用しないことを訴えた。 坂本、大城は、再度行ったPCR検査で2度陰性となり、チーム内の濃厚接触者も全員陰性で懸念されたチーム内のクラスターは起きておらず、結果的に「微陽性」の言葉通りに事は運んだ。だが、賀来・特任教授の真摯な告白は、シーズン開幕後に感染者が出た場合のメディア発表の手法に警鐘を鳴らすことになった。世論をミスリードするような”尾ひれ”をつけるものではなく、正確に事実のみを詳細に伝えなければならないという教訓である。