現代人の暮らしが”バグ”る「虫村(バグソン)」に行ってみた! 不動産×テクノロジーの第一人者が、山奥に貨幣経済外の集落をつくる理由って? 神奈川県相模原市・藤野
太陽光発電でつくった電力を蓄える、蓄電池も設置。
地元の杉材をたっぷり使ったHANARE。会議やワークスペースとして活用することを想定。巨大モニターも完備している。
“ラボ”っぽさを出す意図から給排水管はすべて露出しています。見えているかっこよさだけでなく、メンテナンスしやすいという実利の側面も。
モノクローム社のHEMS「Home1」を導入し、スマートホーム化。発電状況はもちろん、今、どの家電がどのくらい電力を消費しているのかを可視化している。洗練されたUIもすてき。
ウォシュレットもついているコンポストトイレ。便は堆肥に、尿はタンクに貯めて、ろ過したのちに水で薄めて畑に使う。
こちらはトイレとつながった尿タンク。別途、下水とつながった水洗トイレもあります。
また藤野は、移住希望者が多いものの、賃貸物件、特に家族向けの物件がごく限られているそう。そのため、移住を考えている人が、足がかりとして住めるような賃貸住宅「長屋」を計画しました。こちらはこれから着工、2025年にお目見えする予定です。 「日本の賃貸住宅は、ワンルームが何部屋も並んだものが多く、地方や郊外、都市部と、どこへいってもほぼ同じで、地方や里山ならではの、自然を楽しむプランニングになっていない。だから、里山暮らしに適した長屋住宅の新しい規格をつくろうと思って。半屋外の泥部屋、農作業場、道具をおける場所をつくろうと思っています。ここでプロトタイプが成功したら、日本の木材をたくさん使って、地方の里山創生につなげられたら」と大きな夢を話します。
また敷地に余裕があるため、野菜やハーブ畑、アウトドアキッチン、堆肥小屋などが次々と完成しています。少しがんばらないといけない「オフグリッド 」ではなく、都会と同じような快適性は享受しつつも、少しだけ循環する、今の自然の恵みを活用する、という「半歩先の暮らし」を設計になっているのも特徴です。 でも、なぜ「バグ」なのでしょうか。 「東京の教育の話もそうなんですが、暮らしのすべてが消費活動の中に組み込まれているじゃないですか。たとえば、生ゴミからコンポストで堆肥を生み出しても、使う場所がない。結局、野菜はお店などから買わなくてはいけないですよね。消費してしまったら終わりで、循環していかない。もちろん、お金を出せば美味しいモノも食べられる、なんでも買える。だけれどもすべて『お金』と紐づいてしまっていて、約束されたものが安心して入手できる反面、不具合やバグが発生することってほとんどないんです。でもそれっておもしろくない。だからこそ、普段、お金で買っているということをいったんココで排除してみたいと思って。お金やプライシングを外したときに、人はどのような振る舞いをするのか。人って何かを受け取ったら、返したい、与えたいと思う生き物なはず。じゃあ何がめぐるのだろうかって。ここでどんな暮らしのバグが生まれるのか、この暮らしや価値観に共感してくれる人たちと一緒に体験してみたかったんです」(中村さん) とはいえ、現在の資本主義のルールが骨の髄まで染み込んでいる身からすると、貨幣経済を排除すると言われても、ピンと来ないのも正直なところ。 「賃貸住宅は家賃をこちらが設定しないことを 考えています。また、賃貸で暮らすのであれば、助け合いで、子どもを送迎するとか、買い出しをするとか、たとえば山の手入れをするとか。将来、自分が年齢を重ねたときに代行で運転するとかもいいかもしれません」(中村さん) なるほど、人は当たり前に設定されている「家賃」や「価格」という看板がなくなると「アレ…?」と立ち止まります。今まで当たり前のように払っていたものへの価格がなくなると、自分の労働時間という価値、提供できるもの、そのとき沸き立つさまざまな感情……。それこそが「バグ」なのかもしれません。
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