「イーサリアム保有で年3%」の衝撃 メルコインの“新経済圏”はどこまで広がるのか
保有額に応じたポイント還元
メルコインのサービスの特徴は、イーサリアムの保有額に応じて、ステーキング収益に相当する額をメルカリポイントとして還元する点だ。中村奎太CEOは「ステーキング自体の報酬は弊社が受け取り、ポイント還元の原資とは独立して運用する」としている。つまり、ユーザーが受け取るポイントは、実際のステーキング収益と直接的には連動していない。 この仕組みには複数のメリットがある。ステーキング収益をイーサリアムで受け取ると、その時点での時価で無償付与されたとみなされ、その後の売却時に譲渡損益の計算が複雑になる。一方、ポイントで受け取る場合、受け取った時点で確定した金額の雑所得として扱われる。確定申告は年間の雑所得が20万円を超えた場合に必要となるが、税務処理は比較的シンプルだ。 利用範囲の広さも特徴だ。受け取ったポイントは180日間有効で、メルカリでの買い物はもちろん、イーサリアムを購入することも可能だ。つまり「ステーキング収益を実質的にイーサリアムで受け取ることも可能である」(中村CEO)というわけだ。 還元率は年3.0%からスタートする。「今後の利用状況や収益状況を見ながら変動する可能性がある」(中村CEO)とのことだ。12月からの保有分が対象となり、最初のポイント付与は2025年1月に行われる。現在のイーサリアムのステーキング利回りが3.1%程度であることを考えると、手数料を考慮しても比較的高い還元率といえる。
新たなポイント経済圏の誕生
イーサリアムの保有額に応じてポイントを付与し、そのポイントで買い物や決済ができる――。これは新たなポイント経済圏の誕生を意味する。 ポイントの付与方法は、これまで大きく2つのパターンが主流だった。商品やサービスの購入時に値引きとして付与される形が起源で、これが最も一般的だ。もう1つはキャンペーン的な懸賞として付与される形である。 今回のような資産保有に基づくポイント付与の例は、これまでもいくつか存在する。投資信託の保有に応じてポイントを付与する「投信マイレージ」のような仕組みは、ネット証券各社が提供しておりおなじみだ。 また、フィンテックスタートアップであるFivot(東京都港区)が展開する「IDARE(イデア)」のように、電子マネーの残高に応じて利息的にポイントを付与するサービスもある。ただし、投信マイレージの還元率は低く、IDAREの場合は100万円が上限となっている。 メルコインの新サービスは、こうした既存の資産連動型ポイント還元と似ているが、大きな特徴がある。イーサリアムのステーキングという実質的な収益を原資としているため、多額のポイント付与も可能なことだ。 昨今の暗号資産価格の上昇を背景に、多額のイーサリアムを保有するユーザーも珍しくない。例えば1億円分のイーサリアムを預けたら、年間300万円分のポイントが付与される計算になる。このポイントはメルカリでの買い物だけでなく、クレジットカード「メルカード」の支払いにも使える。まさに、金利や配当のように定期的な収入として活用できるのだ。