「生理で迷惑をかけることに罪悪感があった」子宮内膜症に苦しんだアナウンサーが語る、性について学ぶことの大切さ #性のギモン
子宮内膜症は、子宮にできるものではない
翌日も朝から晩までテレビ番組の収録があった。近所の婦人科へ足を運んだのは、激痛に襲われてから10日も経った後だった。 「2日目、3日目と段階的に痛みが和らぎ、いつもの生理痛と同じだと思ってしまって……。母から『あの痛がり方はさすがにおかしい。一度病院で診てもらっては?』と言われ、仕事が一段落したタイミングで重い腰を上げました」 超音波検査の結果、子宮内膜症と診断された。 「医師から、『両方の卵巣に子宮内膜症が発生して嚢胞(のうほう)ができ、卵巣が4㎝の大きさに膨らんでいる。激痛は、肥大した片方の卵巣が少し破れて中身が体内に流れたため。他の臓器との癒着もあり、内臓が引っ張られるような腹痛も起こっていた』と説明を受けました。そこで初めて『子宮内膜症って何?』と思ったんです」 子宮内膜とは、子宮の内側にある膜のこと。妊娠は、卵子と精子が出合って受精卵となり、子宮に移動して子宮内膜に着床することで起こる。妊娠が成立しなかった場合、受精卵受け入れのために厚くなった子宮内膜は不要となり、子宮から剥がれて血液とともに排出される。それが毎月訪れる生理だ。 だが、子宮内膜が何かの理由で、卵巣などの他の臓器に流れ、そこで出血を起こす場合がある。子宮以外の臓器は出口がないので、経血がどんどん溜まって袋状の嚢胞ができ、臓器の炎症や肥大、痛みなどを引き起こす。それが子宮内膜症だ。 診察の結果、経過観察になった。次に検診を受けたのは1年後だった。両方の卵巣とも7㎝に肥大しており、医師から卵巣内の嚢胞を取り除く手術を勧められた。体を傷つけることに抵抗があった宮島さんは、すぐに決断できなかった。
納得して手術に踏み切るまでのステップ
セカンドオピニオンを求め、別の医師の診察を受けた。その一人が、東京慈恵会医科大学の産婦人科医、柳田聡さんだ。 柳田さんから、黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きをするホルモン剤(ジエノゲスト)を服用して嚢胞を小さくする治療法を提案された。内服治療があるなら試したいと、半年間、服用することにした。3カ月ほど不正出血などの副作用はあったが、服用すると生理がなくなるので、快適さを実感した。嚢胞のサイズは小さくならなかったが、手術に踏み切る決心ができたという。 「腰痛や排便痛、むくみもひどくなってきたんです。嚢胞を手術で取り除くときに正常な組織も少し削り取ってしまうので、卵巣の機能が低下して妊娠しづらくなる可能性があると説明を受けましたが、今すぐ絶対に出産したいという気持ちがなかったことと、つらさから解放されたい一心で手術したいと伝えました」 2021年3月、約3時間の腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術を受けた。下腹部に小さな穴を開けて、へそから入れたカメラで確認しながら、両方の卵巣内の嚢胞を摘出し、臓器との癒着も剥がした。その後、ジエノゲストを継続して服用している。再発はない。 手術を終えて世界が劇的に変わったと宮島さんは言う。 「毎月、生理の期間は、マネージャーさんやスタイリストさんに『ごめんなさい、少しだけ寝かせてください』と謝って、楽屋のソファで横にならせてもらっていました。痛みがないのはもちろん、『人に迷惑をかけない』といった精神面でもずいぶん楽になりました。低用量ピルで生理痛を抑えることができ、子宮内膜症を防げるのなら、もっと早く知りたかったです」