人工林の多様性を左右する除伐・つる切、悩ましいつるの二面性〈材質低下・労働災害と民芸品材料・花や葉の自然美〉
つるによる労働災害
つるは、「つるがらみ」という労働災害の原因になる。樹木の上部につるが巻き付いているのを知らないで伐倒すると、つるに引っ張られて伐倒する方向が狂ったり、梢が折れて落下したりして作業者に当たる。まず重傷以上の重大災害につながることは間違いない。 伐倒作業に入る前に、樹冠を見上げて、指差し呼称で「上方よし、つるがらみなし」と大きな声を出して、確認する必要がある。つるがあればもちろん切断する。 本当は、伐採する前に森林全体を見回って、つるがあれば切断しておかなければいけない。そうすれば伐倒が入るまでに、切断したつるは枯れて張力を失うので、伐倒方向を狂わせる恐れは少なくなる。自然の中で安全に作業するには、周到な準備が必要なのである。 ツタウルシは、秋にはきれいに紅葉、黄葉して麗しい。それをウルシの名前の由来とする説があるが疑わしいものだ。ウルシ同様かぶれに要注意で、その下を通っただけでもかぶれる人がいる。特に樹液が活発に流動する春から夏が危ないようだ。 森の中には様々な危うさが潜んでいる。それらに打ち勝たないと、林内での快適な作業はむずかしい。役立つことも支障をきたすこともあるのが自然である。それをどう生かすのか、林業に携わる人たちの腕の見せ所となる。
中岡 茂