彼に感じたのは、怒りや憎しみよりも哀れみ――記者会見での性加害告発から4か月、カウアン・オカモトが語る自身のルーツと生き方
この人、本当にかわいそうだなって
「ジャニーさんの家ではよく、サカイのユニフォームをドラム式洗濯機で勝手に洗ってましたね」 タワーマンションの最上階が喜多川の自宅で、ジュニアたちのたまり場になっていた。喜多川のお気に入りになるとカギを渡される。カウアンもそのひとりだった。 しかしそのマンションが、性加害の現場になった。 行為はジュニアになって間もない中学生の頃から始まり、15~20回にも及んだという。我慢し続けたのはやはり、あの団地から出てきたブラジルルーツの人間として、なんとしても夢を叶えたかったからだ。 「こんなの、大したことない」と、自分をごまかしてやり過ごした夜もあった。 「死にもの狂いで耐えるんだって思いはありました」 同様の被害を受けたジュニアは他にもいた。 「売れるために自分から性行為をされにいく人もいましたし、ジャニーさんの部屋からお金を盗む人もいたり、いろんな人がいましたね」
喜多川に対して感じたのは、怒りや憎しみよりも哀れみだった。 「この人は、本当にかわいそうだなって思うときもありました。されているとき、この人はどんな気持ちなんだろうと思いました。きっとコンプレックスがあるんだろうなと逆に心配した日もありました。とても幸せには見えなかったです」 業界への不信感も募った。 「夢を与えてるいちばんの事務所がこれなんだから、この世の中って本当に終わってるなと。これがいま僕が生きている世界の現状なんだって、しみじみと思いました」
ジャニーさんは「最高だよ、やろう」と言ったけれど
ジュニアとしての活動は増えたが、満たされない思いも強くなっていく。なりたいのはアイドルではなくミュージシャン。それもソロでやっていきたい。だからオリジナルの曲で勝負しようと思った。知人に依頼した曲にポルトガル語、日本語、英語の歌詞を乗せ、MVも自作した。 「それをジャニーさんに見せて、プレゼンしたんです」 YouTubeにアップして、世界に打って出たい。自信作だった。喜多川の答えは「最高だよ、やろう」だったのに、事務所からは反対された。