彼に感じたのは、怒りや憎しみよりも哀れみ――記者会見での性加害告発から4か月、カウアン・オカモトが語る自身のルーツと生き方
ちょうどその頃、大活躍していたのがローラだ。日本、バングラデシュ、ロシアの血を引く彼女はバラエティ番組に引っ張りだこだった。 「ローラがすごい勇気をくれましたよね。外国ルーツのタレントのイメージを一気に上げてくれました」 また同じブラジル系のダレノガレ明美らハーフタレントが注目されたこともあり、カウアンには追い風だった。
「バイトジュニア」と呼ばれたことも
ジュニア間の競争は想像以上に厳しかった。ときに出し抜き、つぶし合いになる。 「わからない日本語があったら聞くじゃないですか。でもぜんぜん教えてくれないですし、振り付けも教えてくれなかったです。正直、衣装がなくなったこともありました」 外国人相手の嫌がらせというより、ライバルに負けたくないという気持ちの表れだった。ある意味で差別はない激しい競争の世界だった。
上京して一人暮らしを始めたカウアンは、アルバイトも必要だった。家賃や光熱費のほか、自分で通い始めたボイストレーニングやダンススクールの費用を稼ぐためだ。ジュニアの仕事は不定期で収入も不安定だったし、生活の苦しい親には仕送りを頼めない。コンビニや牛丼屋で働いた。ジャニーズファンにバレて「バイトジュニア」と呼ばれたこともある。とりわけサカイ引越センターでよくアルバイトをした。 「ダンスの稽古場で、レッスン着と間違えてサカイのユニフォーム出しちゃって。ほかのジュニアから『何、本当にバイトしてんの?』って言われたり」
日本語も勉強し直して、漢字を特訓した。通信の高校の勉強もこなした。 「ジャニーズに入ってから、全部に対して本気でやろう、ちゃんと生きようって思った。ブラジル人の自分がチャンスをもらえたんだから、ここで何もできなかったらダサいなって。めちゃくちゃ大変だったけど、青春でしたよね」 努力の甲斐あってドラマ『GTO』(フジテレビ系)や『Rの法則』(Eテレ)に出演するなど、少しずつ活動の幅を広げていく。