歩きスマホの転倒リスク増大、歩行リズムが気づかぬうちに変化 京大が解明
スマートフォンを操作しながら歩くいわゆる「歩きスマホ」の転倒リスクは、歩行のリズムが気づかぬうちに変化するために増大するというメカニズムを京都大学などの研究グループが明らかにした。これまで歩きスマホの危険性は画面に集中して視野が狭くなることが原因として挙がっていたが、歩行リズムの変化によってつまずきやすくなっていることが分かった。
京都大学大学院情報学研究科の野村泰伸教授(医工情報学)らの研究グループは、元々、パーキンソン病などの神経疾患が歩行障害を起こす仕組みについて研究してきた。一般的に、パーキンソン病にかかると、最初の1歩が出にくくなったり、早足になったりと、通常の歩行が難しくなり、転倒しやすくなる。医療従事者はこれらの歩き方を「歩行が安定していない」と表現する。
歩きスマホによる事故は転倒・衝突・落下の3つが大きな要因とされる。野村教授は「歩きスマホでの転倒事故も歩き方に起因するもので、視野が狭まることだけが原因ではないのではないか」と考え、スマホゲームの一種「2048」を使った研究に着手した。
実験では10~20代の大学院生44人のかかとに加速度計を取り付け、トレッドミル(ルームランナー)の上を(1)何も持たない「通常歩行」、(2)画面表示がないスマホを持って見つめたままの「非認知課題」、(3)スマホのゲームをしながらの「認知課題」――という3パターンで30分間歩いてもらい、歩行周期の変動をグラフ化した。
通常の成人の歩行は、歩行周期が一度長くなると次の1歩も長くなる傾向が強くなり、逆に短くなると短くなりやすくなるというようにゆらぎ、実は一定の歩行周期を保っていない。厳密に言うと「歩行周期が安定していない」ことが、正常歩行とされる。数十分歩いたときには、歩行周期が長くなったり短くなったりする傾向を長い周期で繰り返している。このことを持続性相関という。
実験の結果、平均の歩行周期とそのばらつきは3パターンとも差はあまりなかった。歩行周期の持続性相関の度合いは、通常歩行と画面表示がない非認知課題では高かったが、ゲームをしながらの認知課題は低かった。認知課題では前の歩行周期と次の歩行周期の関係性が薄れていたという。