菅田将暉「年齢を重ねるのはうれしい。早く老けたいと思ってたので」
── なるほど……。秋子役の古川さんは、菅田さんの5枚目のシングル「虹」のMVで、菅田さんと仲睦まじい夫婦を演じていますが、今回の秋子と吉井の関係はとても奇妙です。古川さんとは、現場で何か話されながら演じましたか? 菅田 お芝居のことはあまりお話してないですが、雑談はたくさんしました。古川さんは、僕も大好きな役者さんなので、いろんなところでお世話になってるし、相変わらず古川さんにしかない艶っぽさというか、表現というのがあるなって。僕は楽しく一緒にお芝居していた感じです。 ── 観る側としては、秋子を通して吉井のことがわかる感じもありました。吉井だけ見ていても、いまいちどんな人なのかつかめないところがあるのが、こんなに素直だったり無防備なところもあるんだなとか。 菅田 そうなんですよね。意外と秋子に対してはピュアに接してはいるので。だから、(映画の結末とは)違う未来もあったんでしょうね。 ── 作品のテーマについてはどう思われますか? “ネットから生まれる集団狂気”というのは、すごく今っぽいテーマのように感じますが。 菅田 そうですよね……でもそれもあまり気にしてなくて、(こういう取材などで)言われて初めて思った感じもありました。ただ、この「クラウド」が持つ言葉の強さみたいなものは、現代的だなと最初に思いました。映画では“不特定多数”という意味で用いてるんですけど。 僕もネットに疎い人間なので詳しいことは言えませんが、ニュースを見てると、弾薬を作るためにいろんな人と繋がって材料を手に入れたり、報酬目的で犯罪に加担する人を募って集めるみたいな事件も現実にあるから、手放しでファンタジーとは言えない作品だなとも思います。 でも、この映画の仕組みとして面白いなと思ったのが、吉井はなんてことない普通の男で、不特定多数の一人だったのに、最後にある重大な行為をしたことによって「何者か」になってしまい、もう戻れないところに来てしまう。 結果として、吉井は不特定多数の人たちが望んでいた「何者か」になるけれど、彼自身はそういう結末を望んでいなかった感じが興味深いんです。それは吉井を追い詰める他の人たちも同様で、最初はみんな、誰かを傷つけたり自分を追い込むつもりはもちろんないのに、そうなってしまったことによって、吉井にも刃を向けてくる。そういう、よくわからないエネルギーが溜まっている感じは、やはり“今っぽい”のかもしれません。