WBTCの共同カストディは中央集権型の失敗の「古傷を再び開いた」
ラップドビットコインの一部ユーザーは今年、その発行元であるビットゴーが、トロン(TRON)の創設者であるジャスティン・サン(Justin Sun)氏が一部所有する香港を拠点とした暗号資産(仮想通貨)カストディアン、ビット・グローバルとビットコインカストディをシェアしていることを知り、動揺した。 ビットコイン・ビルダーズ・アソシエーション(Bitcoin Builders Association :BBA)は12月18日に発表した報告書の中で、この出来事は新たな欠陥を露呈したわけではないにせよ、「かつての中央集権的カストディの失敗によって生じた古傷を再び開いた」と述べている。 「このような傷は、ビットコイン保有者がセルフカストディを放棄して、信頼できるソリューションに任せるのを嫌がる原因となっている」と報告書は分析している。 BBAは、中央集権的なエンティティに対する不信感が高まっている兆候があると指摘した。ラップドビットコインの供給量は、2年以上前にはビットコイン流通量全体の1.5%であったのが、現在は0.74%まで減少している。 2022年に起きた数々の暗号資産企業の破綻は、コインのカストディを中央集権型カストディアンに委ねることのリスクを浮き彫りにした。多くのユーザーは、この教訓を再び痛い目を見てまで学ぼうとは思ってはいない。
WBTCのドミナンス
ラップドビットコインはイーサリアムベースのトークンで、ビットコイン(BTC)と1対1で取引でき、ユーザーはビットコインのエコシステムではほとんど利用できない分散型金融(DeFi)の世界で保有資産を活用できる。 BBAによると、ラップドビットコインはトークン化されたビットコインセクターで他を大きく引き離したマーケットリーダーであり、60.4%のシェアを占めている。大差で2位のBTCB(BNBをベースに構築)と合わせると、2つのトークンの市場シェアは87.2%になる。 しかし、このような強固な基盤は、最近出現している新しいトークンの増加を考えると、崩れる過程にあるのかもしれない。このセクターの21のトークンのうち、40%が2024年にローンチされているか、近い将来にローンチされる予定であるとBBAは述べている。 BBAは報告書の中で、これらのトークンすべてをリストアップし、いくつかのトークンの長所と短所を取り上げた。 例えば、ラップドビットコインは最も流動性の高いトークンであり、すべての主要ブロックチェーンに統合されており、5年以上のストレステストが行われている。 しかし、ビット・グローバルとのベンチャーは、それがもたらすカウンターパーティ・リスクを考えると、多くの人にとって懸念材料である。特に、暗号資産分野で物議を醸したことで知られるジャスティン・サン氏が関与していることを考慮すれば、なおさらだ。 一方、ビットコインレイヤー2「スタックス(Stacks)」のsBTCのようなトークンは、まだストレステストが行われておらず(今週稼動したばかり)、その斬新なプログラミング言語「Clarity」によって、DeFiへの統合はより難しいものとなる可能性がある。プラス面では、ラップドビットコインよりも分散化されており、ビットコインネットワークのセキュリティを継承している。 トークン化されたビットコイン市場は、ビットコイン時価総額のわずか1.23%、当記事執筆時点では約250億ドル(約3兆9000億円、1ドル=156円換算)相当に過ぎない。 「このことは、プログラム可能なバージョンのビットコインを提供するソリューションの計り知れない未開拓の可能性を浮き彫りにしている」と、BBAは指摘している。 |翻訳・編集:山口晶子|画像:Shutterstock|原文:WBTC Episode 'Reopened Old Wounds' of Centralized Failures: Bitcoin Builders Association
CoinDesk Japan 編集部