「やってあげてる」では解決にならない…高校生がアフリカの例で感じた「傾聴力」の重要性
なぜ村に突然「図書館」ができたのか
ボナイリ村にやってきた外国の団体は、おそらく事前の統計情報などから、村の一帯の教育水準が国内でも際立って低いことを問題視していたのでしょう。だから何かしら教育に資することをしたいと思った。そして彼らにとっては当たり前に教育環境の中に存在する図書館という解決策を思いついて実行した……。もし村で過ごす最初の数日、数週間を、村の人たちに話を聞くことから始めていれば、村の大人子どもの多くが読み書きできないこと、英語がわかるのは一握りであること、小学校も先生が来ずほとんど機能停止状態だったこと、夜になると村の宗教指導者が中心になってモスクを拠点に子ども達に読み書きを教えていること……そんな姿が見えてきたと思います。 人々の日常を学ぶために聴くことから始めていれば、無用の長物となってしまっていた図書館には至らなかったのではないでしょうか。或いは、村のことを知った上で人々と話し合いを重ねた上で出来上がった図書館であれば、無用の長物になることはなかったのではないかと思います。 【学生たちのコメント】 文化に対する謙虚さは学び続けることなので、謙虚に学習に取り組んでいこうと思いました。 初めて接する相手やことについて学ぶ方法、知る方法は無数にあります。例えば個別のインタビューと、複数人数を集めて行うフォーカスグループインタビューでは、同じ人からでも出てくる情報が変わってきたりします。一対一で話をしていた時には出てこなかった内容を、仲間と一緒に話しているうちに思い出したり、周りに共感することや反発することを覚えたり……聴く場面設定を変えてみることで、引き出せる情報の量や質が異なってきます。
「傾聴力」のために大切なこと
そもそも話を聴くというのは、日常的にやっているようでいて実はそんなに簡単なことではなかったりします。だからこそ、「傾聴力」という言葉が流行ったりする。相手の言葉を自分の思い込みで理解してしまっていたり、話の途中で話題を奪ってしまったり...心当たりのない人を探す方が難しいのではないかと思います。私もやってしまいがちな自覚があるので、いくつかのマイルールを定めています。そのうちの二つをご紹介させてください。 一つ目は8割聴く。相手のことを知りたい、という姿勢で話をするときは、自分の話量は2割程度にとどめて、8割聴くことを心掛けます。自分の言葉は、相手になるべくたくさん話してもらえるように、話を正しく理解できるように投げかける質問やミラーリング(おうむ返し)、リフレーミング(捉え直して伝える)のために意図を持って選ぶようにしています。 もう一つは、8秒ルール。対話をしていると沈黙が生じることがあります。昔の私は沈黙が苦手で、沈黙を破って自分が話し出してしまっていました。ですが、数年前にコーチング、メンタリングについて学んだ際に、ひょっとしたらそれは相手の思考を止めたり、表現する機会を奪ってしまっているかもしれないと気づき、このルールを設定するようになりました。質問してみて、8秒は待ってみる。それでも言葉に詰まっているようであれば、「今頭に浮かんでいることはなんですか?」等、答えにくさが和らぐような質問を再度投げかけてみる。 言うは易し……ですが、実践はなかなか難しいです。覚えやすいように数字を揃えているのは、ここだけの秘密です。 【学生たちのコメント】 誰かの話を聞くとき、8割くらいは聞いているということをおっしゃっていました。私も自分が話しているときに相手が自分が話している以上に話して来たら「話聞いてー!!」って思うので、相手の話中心に聞こうと思いました。 ◇後編「課題解決の失敗から高校生が気づいたこと「相手のことを知らないと、何も解決できない」」では、原ゆかりさんが「やってしまった」と思っている「Culture Humanity」の軽視だったという事例から、「課題解決」についての話と、学生たちの反応をお届けします。
原 ゆかり(NGO MY DREAM. org設立者、獨協大学非常勤講師)