75歳からのがん治療 ~がんと年齢の深い関係~
がんに対する主な治療法
十分な治療効果を得るには標準治療をおこなうのが有効ですが、併存症がある場合などは、複数の治療法を併用する集学的治療はさける傾向があります。 (1)手術 完全に病巣を切除できれば完治も期待でき、術前の検査などで手術可能と判断されていれば高齢でも選択可能です。ただし、手術にともなう合併症(せん妄など)が起こる危険性は歳をとるほど高まります。 がんの種類や進行の程度によっては、体を大きく切らずに病巣を取り除いたり、治療したりする方法が可能な場合もあります。 (2)薬物療法 抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞をも傷つけるおそれがあります。副作用の多くはコントロール可能ですが、高齢の場合、体力の低下が進むこともあります。 新しい治療薬(分子標的薬など)も登場しており、体への負担は小さい場合もあります。 (3)放射線療法 手術や薬物療法が難しい場合でも実施できる可能性はあります。ただし、高齢の場合、連日の通院が難しい、放射線を当てるときに同じ姿勢を保つのが難しいなどということもあります。治療中、治療後に悪影響が現れることもあります。 (4)緩和ケア がんがもたらすつらさをやわらげ、生活の質の維持・向上を目的にした治療やケアをまとめて緩和ケアといいます。ほかの治療法と並行しておこなわれる場合は、支持療法といわれることもあります。 次回は<「高齢だからこそ」がん治療を考える上で気にしなければいけないこと。「治療すれば元どおり」とはいかない>です。
小川 朝生(国立がん研究センター東病院臨床開発センター精神腫瘍学開発分野長)