【米大統領選にみるリーダーに必要な6つの資質】ドナルド・トランプとカマラ・ハリスを徹底比較
トランプの勝利で決した2024年アメリカ大統領選挙。混迷を極める世界情勢で「ドナルド・トランプ次期米大統領」は、これからリーダーとしての資質を自国民のみならず世界から問われることになる。果たして次代のリーダーに求められる資質とは何か。 アメリカを二分した歴史的な選挙戦を振り返りつつ、トランプとハリス、二候補の比較を通して、彼らのエピソードと歴史的事実を交えながら「指導者(リーダー)に必要な6つの資質」をみていこう。
【リーダーに必要な資質1】印象管理
自己のイメージを構築するスキルは指導者に欠かせない。 社会学者アーヴィング・ゴフマンは「印象管理(Impression Management)」の概念を提唱し、政治指導者が国民に対してどのように自分を見せるか、つまり意図的に印象を操作する重要性を指摘している。印象管理とは、つまり「自己演出」の技術であり、自らのイメージを好ましいものに調整するスキルを指す。
トランプは、X(旧Twitter)を駆使した「印象管理」の達人である。SNS上で頻繁に発信することで、自己イメージを定着させ、支持基盤との一体感を維持してきた。特に、挑発的な表現や相手を直接名指しで批判する手法は、彼の「明快で大胆で力強いリーダー」という印象を支持者に浸透させた。政策方針だけではなく、「敵」と「味方」を明確に示すことで、支持者に危機感や団結意識を抱かせる戦略も功を奏したと言っていいだろう。「印象管理」の研究では、リーダーが自らを国民の「味方」として明確に位置づけて演出することで、集団の忠誠心が増すとされ、トランプはこの点を巧みに利用したのである。
一方で、カマラ・ハリスはイメージ戦略上の課題を抱えていると指摘されることがある。メッセージや立場が時折一貫せず、選挙戦の初期の段階では政策や意見が頻繁に変更され支持者の混乱を招いた一面もある。 とくに、トランプの煽(あお)りに反応したことで感情的な一面を見せ、印象管理に欠ける姿を露呈してしまった。トランプの戦術の一つは、相手候補を煽り、相手候補の下品な姿を晒すことにある。トランプのこの“低俗な戦術”に乗っかり相手の土俵に引き込まれたことはハリスにとって致命的なイメージ戦略上の失敗だったと言えるだろう。 高潔で品位あるリーダー像を打ち出せる可能性もあったが、そのためには泰然(たいぜん)とした態度が求められたであろう。冷静なイメージと品位を保つためには、次の要素である「感情をコントロールするスキル」が不可欠である。