【米大統領選にみるリーダーに必要な6つの資質】ドナルド・トランプとカマラ・ハリスを徹底比較
【リーダーに必要な資質2】感情を制御する力
ハリスは大統領選を通じて、トランプに対して挑発的な発言や衝動的な批判を繰り広げる場面もあったが、もともと冷静沈着な振る舞いは彼女の強みの一つであった。 かつて2020年の副大統領候補討論会で対立候補のマイク・ペンスから繰り返し発言を遮(さえぎ)られたり、挑発的なコメントを受けた時には、ハリスは感情的に反応することを避け、笑顔と冷静な態度で「I’m speaking(私が話しています)」と主張するなど穏やかで断固とした態度を示す場面もあった。 自己の内面をコントロールできる指導者はストレスの多い状況でも冷静さを保ち、安定したリーダーシップを発揮することができる。そのことについて、心理学者ダニエル・ゴールマンは「感情の知性(Emotional Intelligence)」という理論を提示し、指導者にはメンタルの強靭さや自己制御が求められると説いている。 これまで多くの政治指導者が、感情の制御に工夫を凝らし、判断力と冷静さを保つよう努力してきた。例えばイギリス首相のウィンストン・チャーチルは、ストレスや感情の起伏をコントロールするため、日常的に昼寝を取り入れて体力を回復し、集中力を高めていたと言われる。 他にもアメリカの大統領だったフランクリン・ルーズベルトは、大統領としての職務を通じて、「決断を急がない」独自のアプローチを採用していた。彼は重要な決断が迫ると、「緊急性がない」という態度を周囲に示して猶予をつくり、自己の内面と向き合う時間を意図的に確保した。さらにこれは側近やアドバイザーのプレッシャーを一時的に軽減することにも繋がった。直観や衝動ではなく、焦らず慎重に「待つ」姿勢が、理性的な判断と持続的なリーダーシップを可能ならしめたのだ。
過去のリーダーたちは、冷静な判断と信頼を得るために、さまざまな方法で感情のコントロールに取り組んでいた。感情を制御し冷静な判断力を維持することは、リーダーとしての信頼と持続的な影響力を築くための重要な要素であり、現代の政治家(そして次期アメリカ大統領にも)強く求められる教訓といえる。