【米大統領選にみるリーダーに必要な6つの資質】ドナルド・トランプとカマラ・ハリスを徹底比較
【リーダーに必要な資質4】強い信念
指導者にとって「強い信念」は欠かせない。政治学者マックス・ウェーバーが『職業としての政治』で説いたように、確固たる信念や情熱こそが、困難な状況でも人々を惹きつけ、共感を生む原動力となるからである。
トランプは、ポピュリズム的な信念を明確に打ち出し、「Make America Great Again(MAGA=アメリカ合衆国を再び偉大な国にする)」や「America First(アメリカ・ファースト)」といったシンプルで力強いスローガンで、支持者に揺るぎないメッセージを伝えた。移民政策や産業保護政策でも一貫したメッセージを伝えることで、保守層をはじめとする多くの国民の共感を惹きつけた。信念を貫く姿勢は、政治家が選挙や政策実行の場で成功するための鍵となる。
強い信念が欠けた場合、政策や行動への共感を得るのは難しくなる。対照的にハリスはそのメッセージが一貫性を欠いていると批判されることが多く、その結果、政策やビジョンが明確ではないという印象を与え、選挙戦で苦戦を強いられた。明確なビジョンの欠如や発言の一貫性のなさは、信頼を損なう要因となり、国民の支持を固めるには不十分だったと見なされる。 強い信念を持つリーダーは、たとえ反対意見があっても自らのビジョンを堅持し続け、他者と対立しながらも共感を広げていくことができるのだ。
【リーダーに必要な資質5】高い政治リテラシー
トランプは「ディール外交(取引外交)」のスタイルで知られ、その特徴的なアプローチは国内外で大きな注目を集めた。ディール外交とは、国際的な問題や交渉において「取引」としての交渉を重視し、各国と直接的で個別の契約や合意を結ぶことで、アメリカの利益を最大化しようとする手法である。
このアプローチは彼のビジネスマンとしての経験に基づく特徴的な交渉スタイルであり、「ウィンウィンの結果」を目指すと同時に、しばしば強引で一方的な交渉を行うこともある。そしてそれは、「国際的な信頼の低下」や「多国間協力の弱体化」を招き、各国の懸念を引き起こしてきた。 外交や国家経営においては、ビジネスのような取引的視点だけでなく、国際関係や協力の基盤を理解するための高い政治リテラシーが求められる。短期的な利益を追求するあまり、国家の長期的利益や国際社会との協力体制が損なわれれば、結果的にアメリカの不利益につながる可能性もある。国家の経営は不動産会社の経営のようにはいかない。それは単なるディール以上に複雑であることを、彼は今後慎重に考慮する必要があるだろう。