パリオリンピックで見えた「男子の世界バスケ6つのトレンド」
■「スイッチを見越したマッチアップ」
ピック&ロールなどスクリーンに対しての守り方も面白かったと言えます。その一つがボールを運んでくるサイズの小さい選手に対して、ある程度足のあるビッグマンをあえてマッチアップさせていることです。多くの場合、ボールマンへのスクリーンからオフェンスがスタートしますが、その際にスイッチさせて守り、そのあとに本来のガード同士のマッチアップになるように、あらかじめボールマンにビッグマンをマッチアップさせているように見えました。 例えばドイツ代表のアイザック・ボンガ選手は身長203センチ、ウィングスパン213センチですが、ポイントガード登録としてガードへのマークも任され、スイッチしてはビッグマンも守れるとディフェンス面で大きく貢献しました。日本でもお馴染みのデニス・シュルーダー選手と同時出場の時間では彼より高い位置でボールマンにマークすることで、同時にシュルーダー選手のディフェンスでの負担を軽減させた効果もあったかもしれません。ちなみにドイツ代表の平均出場時間で30分を越えた選手はフランツ・ワグナー選手の32.0分、デニス・シュルーダー選手の31.4分の二人だけでした。 昨シーズン、Bリーグでは富樫勇樹選手や河村勇輝選手に対し、サイズのある外国籍選手をマッチアップさせることが話題になりました。今回の五輪でそれを採用したチームがあったことで、Bリーグでもそのような守り方が増えてくるかもしれません。
■「ノーヘルプ」
育成世代では、今も昔も相手チームがドライブを仕掛けてきたら、ボールのないサイドにいる選手たちは、いつでも手が出せる場所(ヘルプポジション)にいるように教えられてきていることが多いと思います。もちろんその守り方を知っていて、遂行できることがベースにあることが前提ですが、今回の決勝トーナメントでは違う傾向が見られたと思います。 ヘルプポジションでは往々にして自分のマークマンと距離が生まれます。ドライブからのキックアウトという戦術が当たり前のようになっている現代では、自分のマークマンを離して守っていると、そこにパスを入れられば3ポイントシュートを打たれる危険性が高くなるわけです。そのため、特に勝負所やクロスゲームの状況では「ノーヘルプ」で、自分のマークマンだけに集中して守るフォーメーションを多く見ました。 決勝のステフィン・カリー選手のような3ポイントが12分の8(成功率66.7パーセント)、2ポイントのアテンプトは1本だけという恐ろしい選手はそうそういないと思いますが、各チームともいかに高い確率で3ポイントを決めるかに重きを置いています。そのため「ノーヘルプ」の考え方がトップレベルのスタンダードになっていくかもしれません。相手チームへのスカウティングによって、相手の長所をいかに潰せるようにアジャストするのかは常識です。ここではヘルプポジションで守るか、ノーヘルプで行くのかということに注目しましたが、育成年代からどちらでも対応できるようにしていくことが重要だと考えます。