パリオリンピックで見えた「男子の世界バスケ6つのトレンド」
■「分厚いベンチユニット」
多くのチームが国を代表する選手で構成した最強チームで、しかも世界で12カ国しか出られないのが五輪です。当たり前なのですが…一発勝負で負けられない試合のなかで、毎ポゼッションで高い強度のディフェンス遂行(インテンシティ)が求められ、それにより選手も激しく消耗します。 そのため消耗した選手の交代を早くして、常にフレッシュな選手を送り込む必要があります。今大会で目についたのは、ベンチから出てくる選手とスタートの選手で質の変わらない、インテンシティの高いディフェンスを特に維持ができるチームが決勝トーナメントに残ったことです。 日本代表では八村塁選手の欠場の影響などもありますが、3試合を通じての平均出場時間が渡邉雄太選手36.9分、ジョッシュ・ホーキンソン選手36.5分と長い時間コートに立ちました。もちろん彼らが代えがたいタレントだからとはいえ、試合を通じてフレッシュにプレーさせることが難しかったとも言えます。 3位決定戦を含めた決勝トーナメント全8試合で100点ゲームとなったのは1試合(準々決勝アメリカ122-87ブラジル)だけでした。日本代表は前半の失点で初戦ドイツに52失点、2戦目フランスに49失点(一番肉薄した試合)、3戦目ブラジルに55失点と、100点ペース以下で前半を終えられたのはフランス戦の1試合でした。今後はよりディフェンスでチームに貢献でき、チームメートをホットでフレッシュにい続けさせられる選手を置くメンバー構成が五輪やワールドカップなどの世界大会でさらにトレンドになる傾向が強くなるかもしれません。
■「チーム成熟度」
ドイツ代表は昨年のワールドカップ、強化試合、五輪で選手の名前を覚えた方も多いでしょう。そのワールドカップでは優勝し、今回の五輪では準決勝でホームのフランスに敗れはしましたが、高い成熟度を見せてくれました。ドイツ代表は2022年ユーロカップで初めて3位入賞を果たし、そしてワールドカップで優勝、そして五輪で4位と近年のFIBAゲームで成果を残しているチームだと思います。 短い強化期間でしか設定できないのが代表チームの難点ですが、デニス・シュルーダー選手、ワグナー兄弟、ダニエル・タイス選手などNBAでプレーするキープレーヤーたちが、複数大会を連続して出場した影響は大きいと思います。準々決勝でセルビアに敗れたオーストラリア代表も同様に、ジョシュ・ギディー選手、パティ・ミルズ選手などのNBAプレーヤーがワールドカップから継続して代表にコミットしており、攻守で高い成熟度を見せました。銅メダルに入ったセルビアもユース時代から一緒にプレーする選手も多く、昨年のワールドカップで準優勝、今回の五輪でも上位入賞を果たしています。 どうしても制約が多くなるのがNBAプレーヤー。一方でチームの成熟度を上げることによりチーム強化が進むのは自明なこと。様々なマネージメントが代表チームでも必要になっているようです。