森林の自己再生力が、二酸化炭素を減らす大きな助けになる
森林再生のカギは多様性
また、熱帯雨林が近くにあれば、森林伐採後の荒れた土地はその恩恵を受けられるといいます。熱帯雨林から飛んできた鳥がフンと一緒に種を落とすのをきっかけに森が育ち始めます。 いったん樹木が定着すれば、サルなどの樹上で生活する動物種が果実を食べて種を蒔きます。こうして始まった生物多様性の自己強化サイクルによって、わずか10年で高さ24mの森に成長します。 生物が多様であるほど森林の回復力は高まり、劇的な変化にも耐えられるようになります。例えば特定の種が病気によって全滅しても、似た特徴を持つ別の種がその穴を埋めてくれるかもしれません。だからこそ、アップルシード氏のように同じ種類の木を大量に植えるのと、自然に回復する多様な熱帯雨林は比べものにならないのだそう。 カリフォルニア科学アカデミーの古生態学者で、気候が生態系に与える影響を研究するピーター・ループナリン氏(今回の研究には不参加)は、次のように述べています。 システムに生物多様性があれば、(森林は)生態学的により機能的で強くなる傾向があります。自然の複雑さに関する理解が追いつかない限り、私たちは常に大自然の営みから一歩遅れをとることになるでしょう。
森林農業で豊かに
論文の主執筆者であるクイーンズランド大学のブルック・ウィリアムス研究員は、コスパの高い森林再生地を特定するために、政府や非営利団体は今回の調査データを活用できると指摘し、次のように話します。 重要なのは、私たちのデータセットでは、どこを再生すべきで、どこを再生すべきでないかについてはわからないということです。 ウィリアムス氏は、自治体がそれぞれの地域の事情や条件に合わせて判断を下すのが一番だといいます。 環境団体Nature Conservancyの上級森林再生科学者であるスーザン・クック・パットン氏によると、世界中で1,500以上の樹種が森林農業に利用されており、そのなかには多くの果物や薬効をもたらす木も含まれているそうです。 クック・パットン氏は、農業生産をより樹木へとシフトさせて、炭素や生物多様性の価値を高めることで、地域住民の生活向上を手助けする方法がないか模索しています。森から搾取するのではなく、森と共生できるのがベストですよね。