次期トランプ政権に落胆する人たちに伝えたい「すべては私たち次第」の希望と未来
反動で新しいうねりも生まれた
しかし、そういったショックの反動で、同時に様々な人権運動が生まれ、進んだのも、前トランプ政権中だったのです。 「#MeToo」のようなムーブメントが起きるなんて想像もできなかった中、大きなムーブメントとして、女性の権利が大きく前進し、セクシャルハラスメントや性加害についての理解が大きく進みました。また、2020年に大きく躍進した「Black Lives Matter運動」の勢いをそのままに、コロナ禍のアジア人ヘイトに対抗する「#StopAsianHate」といったムーブメントも生まれました。 これはとても大きな変化です。長年、アメリカにおけるアジア人は「馬鹿にしていい」「脅威ではない」「虐げられても寡黙にいい仕事をする」という存在である、「モデルマイノリティ(理想的な非白人)」と呼ばれていました。ですが、この運動を経て、アメリカ社会においてアジア人に向けられる視線はまさかの変化を遂げ、私自身の実生活でも違いを認識できるほどでした。今年エミー賞で、ドラマ『SHOGUN(将軍)』が作品賞、真田広之さんが主演男優賞を受賞した背景にも、そういったアジア人やアジア文化への敬意が急激に育った結果であったともいえるでしょう。 これから始まる次期トランプ政権中も、短期的には最悪に思えることが起きたとしても、その反動で政権期間を超えるような大きな変化やうねりが生まれるかもしれないと心から願っていますし、自分自身も問題には声を上げ続けていくつもりです。
ラジカルアクセプタンス、すべては私たち次第
11月6日、トランプ当選の開票結果を聞きながら、私はこう心で呟きました。 “2016年のショックがあるから、心の準備はできていた 事実を受け入れる ラジカルアクセプタンス” 「ラジカルアクセプタンス」とは、心理学用語で、自分のコントロール下ではないことを良い/悪い、といった評価なしに「起きたこと」とアクセプト(受容)して前に進むことを意味します。日本語だと、「あきらめる力」「あるがままに生きる力」などと訳されることもありますが、そうではありません。現状をあきらめて受け入れるのではなく、単に事実を事実として受け入れること。トランプ新政権に対しても、事実を受け入れた上でどんな行動に出るかは、我々次第なのです。選挙は勝ち負けが評価になってしまいますが、国は0か100かではありません。 私が今回の大統領選で心打たれたのは、カマラ・ハリス大統領候補を全力でサポートするカマラの夫、ダグ・エムホフの存在でした。愛する女性の躍進を心からサポートして行動に出るダグは、新しい男性像を見せてくれました。カマラはダグと結婚したことで、ダグの前妻との二人の子ども、コールとエラの義理の母になりました。8月には、イリノイ州シカゴで開催された民主党全国大会で、コールとエラは「僕たちは典型的なファーストファミリーとは違うかもしれないけれど、アメリカの全家族を代表するつもりだ」と述べたのです。 また、当時副大統領候補として指名受諾演説を行ったミネソタ州知事のティム・ウォルズは、自らの不妊治療の苦しみや辛さを語り、発達障害のある息子や家族への愛を述べ、大きな感動と共感を呼びました。全国から注目される舞台で、このように様々な家族のあり方を見ることができたことに喜びを感じました。 そして、ヒラリー・クリントン元国務長官からカマラ、オバマ元大統領夫妻からカマラに渡った、女性や、オバマから有色人種のリーダーシップのバトンも約20年アメリカで暮らす自分にとっては胸が熱くなる思いがありました。 大統領選ではトランプが勝利しましたが、投票数を見るとトランプの獲得票は過半数以下。誤差での勝敗であっても、「勝利」に目が行きがちですが、こういったアメリカを支持する人もまた半数いるのです。そう考えれば、フェミニズムが「負けた」わけでも、白人至上主義が「勝った」わけでもないのです。