『銭湯図解』の塩谷歩波が語る「こわい」との適切な距離感。公開インタビューをレポート
対話を通して気づく「自分の感情」
─その状態からはどのように脱したのでしょうか? 塩谷:ずっと話を聞いてくれる友達がいて、自分が本当に感じていた気持ちに気づき、これまで自分が感情を感じないまま走っていたことがだんだんわかってきました。 ─対話を通して自分を見つめ直したんですね。 塩谷:人をつくるのは人でしかないんだと思います。自分ひとりで、自分を見つめ直すのは難しいですね。 ─感情の波が少ない状態を維持するために意識していることはありますか? 塩谷:対話することですね。自分自身と、もちろん友達と。自分自身は、お風呂上がりに”今日何があった?””どんな気持ちだった?”と気持ちを振り返る時間を作っています。あと規則正しい健康な生活も大事だと思います。 ─女性の場合、生理前の心身の不調でメンタルの舵取りに悩む方も多いですが、塩谷さんはどう対処されていますか? 塩谷:体の不調によるものは抗いようがないので、その期間中は仕事はこれをやるとか、この友達とは会うとか、ここには行かないとかいうルールを決めています。 気持ちのバランスが取れるようになったのも自分でルールをつくるようになったからかもしれません。16時以降はカフェインを摂らない、お金の使い方を振り返る、酒を飲みすぎないなど、細かく決めています。
塩谷歩波という名前が1人歩きするこわさ
─急激に銭湯図解が世間に広がったときはどんな気持ちでしたか?また、自分のクリエイターキャリアのなかでどのような意味があると思いますか? 塩谷:当時は常に興奮してる感覚でした。毎日新鮮で楽しい気分だったけど同時にずっと追いかけられてるような気持ちが強くて、嬉しい反面少しこわかったです。 あの急激さはキャリアを作るうえではとても大切だし、それでいまも食べてはいけているので良かったなと思うんですけれども、気持ちが追いついてない部分もありました。 もともと自分がクリエイターとしてやっていけると思ってなかったのに、どんどん塩谷歩波という名前が1人歩きしているような感じはこわかったです。 ─銭湯図解が広がったあと、自分のキャリアの歩み方についてはどう考えられましたか? 塩谷:ちょうど考えなければいけないタイミングが来ていると思っています。いまもいろいろなお仕事のお話をいただいていますが、少し落ち着いているので、この先どうするのかをリアルに考えてます。 いまは本づくりのお話が何件か来ていて、2~3年のうちに3、4冊出ると思いますが、書きたいものがたくさんあって、まだ足りないと感じていています。画家はオリジナルで自分の絵を描いて売るのが基本だと思うんですが、私の場合は本を出して販売することが創作活動なんじゃないかなと。 絵を描くだけでなく、文章や写真を撮ることも好きなので、今後は本づくりをいっぱいやれたらいいなと思っています。 ─塩谷さんにとって、アウトプットの形式は本が一番なのでしょうか? 塩谷:絵を描いて販売しても所有できる人は1人しかいませんが、本にすると何万人もの人に届きます。自分の「好きなものを届けたい」という気持ちから考えると、今は本という形がぴったりかなと思っています。