地球外生命を探して -太陽系の“三大名所“をめぐる 2.エンケラドゥス
谷:地球、今度は近いところに戻って来ました。さあ、動画を用意してきましたよ。こちらをご覧ください。 関根:これ、なんだか分かりますかね。はい。 子供:熱水噴出孔。 関根:すごいね。熱水噴出孔なんて小学生くらいの子があたりまえのように知っている時代が来るとは思いませんでしたが(笑)。熱水噴出孔、そのとおりですね。熱水噴出孔というのは何かというと、地球の地面の岩石があったまって、そこで海水が熱せられて、そこでこういうような熱水が噴出する。温泉が湧き出るようなことが起きています。 こういう場は、この映像で分かるとおりあの白いのは全部エビですよね。ちっちゃいエビ。で、なんでこんなところでエビが生きてるんだと思うかもしれませんが、実は、岩石と海水が熱エネルギーで反応してできる火山ガスを食べることで、バクテリアのような微生物は生きることができます。で、その小さい微生物を食べるちょっと大きい生物がいて、で、それを食べるこういうエビとかカニがたくさんいるわけです。 これらの生命、とくに火山ガスで生きている微生物は、太陽の光を必要としないわけです。自分の食べものは地下の熱エネルギーから得ることができるのです。同じような生命の在り方、生態系がひょっとしたら、エンケラドゥスにもあるかもしれないと。そういうことを想像させてくれるわけですね。 谷:ただいまの映像、海洋研究開発機構さんの提供で流させていただきました。私たちが太陽の光によって生きていられるのと同じように、海の深いところの生物は光がなくてもその中から出てくる物質をエネルギーにして生きているかもしれない。そういうことですね。 はい。もしかしたらこんなところにも生命がいるのかもしれないんですけれども、それではエンケラドゥスのまとめを関根さんにお願いいたします。 関根:はい。太陽系の名所、2つ目は、われわれの想像しないような、太陽の光の届かない地下の海と太陽光を必要としない生態系です。エンケラドゥスは、表面は冷たいんですけど内部が温まって液体の海があります。そこでは地球と同じように塩分とか有機物もたくさん溶けていて、海底の温泉、熱水噴出孔みたいなのもありそうだということもわかってきました。 ひょっとしたらこういうところで生命が生きているかもしれない。実際そういうところに行って、海の中に探査機送るのはなかなか難しいんですけど、エンケラドゥスは自分で海水をわざわざ放出してくれているので、そこに行って探査機が行って、そこで海水をつかまえて地球に帰ってくれば、その海の海水の中にはひょっとしたら生命の痕跡が見つかるかもしれない。そういうことを予感させてくれる非常に面白い天体だと思っています。 谷:はい。ありがとうございました。そして次へ行く前に、ほんの少しだけ、ちょっとね。面白い話があるんですよね。今、海を。 関根:はい。そう考えると地球上の、海って何かなっていうことですよね。液体の海。で、地球みたいに太陽の光のエネルギーで、その熱で地表に海がある天体、火星もそうでした。そういうような天体と、エンケラドゥスのように地熱で氷を溶かして内部に海を持つような天体。どっちが太陽系の中でメジャーな天体か。 実は数だけで言うと、中に海を持っている天体のほうがメジャーだってことが分かってきました。今日、お話ししたのはエンケラドゥスだけですが、エウロパ、あるいはガニメデ、タイタンっていう星は、内部に液体の海を持っていることが分かってきています。じゃあ銀河系全体においてはどうなのか。これはまだ分かんないですね。分かんないですけど、太陽系の中の数を考えても、恐らくわれわれの地球のように、太陽光の熱で維持される地表に存在する海っていうのは、ある種特殊な海の存在形態なのかもしれない。
じゃあ、生命はどうなのか。太陽に支えられるわれわれみたいな生命と、太陽を必要としない海底で生きているような生命。どっちが、宇宙っていう意味でメジャーな生き物なのか。メジャーな生き物の形なのか。ひょっとしたらわれわれみたいな生き物の形は、宇宙の中ですごく珍しい存在なのかもしれないということを思わせてくれるわけです。 谷:宇宙の中だと、私たちの常識がちょっとずつ変わっていくような感じがしますね。では、そろそろ次の三大名所、3つ目にいきましょう。エンケラドゥスを離れていきます。 →第3部へ