あって当然の「性の健康と権利」が日本にないのはおかしいって言いたかった SRHRアクティビスト・福田和子
それに対して、日本では、女性を守る政策として避妊の選択肢やアクセスを十分に用意してはいない。ほとんどが男性主体のコンドームであり、緊急避妊薬へのアクセス状況は先述した通りだ。妊娠を誰にも言えず、一人で出産して遺棄して、女性だけ逮捕されるという事件が後を絶たない。 「圧倒的な“政策”の違い。遊廓があった時代と地続きの課題で、日本は今も、誰も守られてないじゃん!って気づいてしまったんです」 留学中の2017年に、「人生の転換点」となる経験を得る。「性の健康世界学会」の国際会議がプラハで開催され、福田は「勢いで」参加。ここで世界中の性の専門家(セクソロジスト)と出会えた。性暴力の研究者も、オーガズムを研究する医師も、性教育者も、セックスワーカーも同じ舞台に立ち、みんなで違いを分かち合い認め合いながら、大きな目標に向けて熱い対話を繰り広げている。センシティブな課題を乗り越えながら「性の健康・権利」をポジティブに話し合おうとしていたのだ。 「日本では性的経験は特に女性は恥と捉えられがち。でも世界中で大勢の人が、性で傷つくのではなく、性によって人生が豊かになれる世界を創ろうと尽力している。感動で涙が出そうだった」 そんな体験を経て、「SRHRの考え方を広げよう」と帰国後の18年に立ち上げたのが「#なんでないのプロジェクト」だ。秀逸なのは、そのネーミング。女性学の先駆者で社会学者の上野千鶴子(76)は、福田の率直な物言いや実践的なアクションに感心したという。 「彼女の活動を知った時、『なんてわかりやすいの!』って、ネーミングにうなった。避妊や中絶も含めて、日本の産む・産まないに関連する技術や方法がガラパゴスなのは世界に恥じるところ。そこに若い女性が出てきて、必要な選択肢を直球で『なんでないの』と政治や社会に迫っていた」 福田は、名付けの経緯をこう話す。 「あって当然のものがないからおかしいって、キッパリ言いたかった。日本では、『避妊』という言葉にもまだ忌避感があって、その二文字は入れなかった。何日も考え、素直な気持ちを一言で表しました」 (文中敬称略)(文・古川雅子) ※記事の続きはAERA 2024年10月28日号でご覧いただけます
古川雅子