「タフなレースになればちょっと有利だと思う」パリ・オリンピックの出場権を得た小山直城は、どのようにして道を拓いてきたのか
マラソンは接地が重要。カラダの真下に足を着く。
実は『MGC』に出場するには関門があり、『MGCチャレンジレース』と呼ばれる指定大会で記録が出なければ、出場ができない。小山は『東京マラソン』を選んだ。ただ、この時点でパリのことはまったく考えていなかったという。なぜか? 彼は『MGC』の出場自体が目標だったのだ。小山には憧れの先輩がいた。それが同郷の設楽悠太だ。 小山は高校3年生のときの都道府県駅伝で設楽と襷を繫いだという経験もあり、設楽がいたホンダで走ることを決めた(設楽は現在西日本鉄道所属)。設楽が走った東京オリンピック出場を決める20年の『MGC』では、沿道で応援をした。このレースで設楽はスタートから飛び出して快走。最大で先頭集団から2分以上の差をつけて独走するが、37kmの上り坂で集団に吸収されて、残念ながらオリンピックを逃したのだ。 「ああいうすごいレースをして、応援も多くて、だから『MGC』には一度は出てみたいというのがありました。設楽さんは走りのリズムが本当にすばらしくて。時計をあんまり見ずに設定タイム通りに走れたり、一緒に練習していてもとても走りやすい。なかなか真似できないです」 『東京マラソン』で『MGC』出場権を摑み、小山はパリを頭に描き始める。やることは多い。強豪ホンダの選手であるからには、駅伝とマラソンを両立させなくてはならない。 「駅伝とマラソンは、足で蹴るか蹴らないかの差です。短い距離の駅伝では、ペースが速くなる。その点、マラソンではあまり蹴らずに足の接地を重視します。カラダの真下に着くと、地面から上手く反発が受けられるので楽に進める。それが頭の位置を上下させないことに繫がるし、体力の消耗も抑えられるんです」 走り方の違いで、当然ケガのリスクも変わってくる。地面を蹴れば、脚はより強い衝撃を受ける。社会人の駅伝といえば毎年1月1日に開催されるニューイヤー駅伝だ。小山は毎年秋に入ったころに、駅伝の練習に切り替えるようだ。ただ「あんまり好きではないんです」と苦笑いするのだが、こればかりは仕方ない。