高まる「ホームグロウン・テロ」の脅威 対策には何が必要か?
治安機関とのイタチごっこ
ホームグロウン・テロリストによるテロ事件は、2000年以降、米国や欧州で発生するようになった。スペインのマドリードで発生した列車同時爆破テロ(2004年3月)、サミット開催中にロンドンで起きた地下鉄・バス爆破事件(2005年7月)などがその典型であるが、警察は犯人を事前に監視下に置くことはできなかった。 他方、既遂となる前にテロ計画が発覚し、摘発されるという事件も多数存在する。その例として、カナダ・トロントにおける政府機関・商業施設への大規模爆弾テロ計画(2006年6月)、ニューヨーク・タイムズスクウェアでの自動車爆弾未遂事件(2010年5月)などが挙げられる。 上記カナダの事件では、治安機関はわずかな捜査情報から犯人たちの監視を始め、証拠がそろった時点で一挙に18人を逮捕した。逮捕者の大半は移民家族の出身で、その国で生まれ、その国の国籍も有している。9.11テロ事件の犯人のように、テロを起こすために中東から米国入りしたわけではなく、過去のプロファイリングも全く役に立たなかった。 こうした現実を見る限り、プロのテロ組織が、ホームグロウン・テロリストを育て上げ、洗脳してテロの実行行為者に仕立て上げるという戦法は、今後もテロ組織の有効な手段として活用されるであろう。
日本も標的になるのか?
国際テロ組織は、これまで、実際に日本の国土にテロを仕掛けてきた例はない。ただし、理論的には、わが国もホームグロウン・テロリストに狙われる可能性は大いにある。昨年6月、イラクとシリアで「イスラム国」(IS)を建国した「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)は、シリアに入国した日本人2人を人質に取り、1月20日、政府に2億ドルの身代金を要求した(※注)。 なお、「イスラム国」は、これまで、身代金誘拐ほかの犯罪行為で多額の活動資金を稼ぎ出しており、身代金を支払わなかった米国人、英国人、ロシア人の人質が見せしめのために殺害されている。このように、政府や当事者にぎりぎりの選択を迫る厳しい事態が、今後もわが国に降りかかってくる可能性は極めて高いと言える。 それでは、日本の国土を舞台にしたテロが起きる可能性はどの程度あるだろうか? 紛争国でテロ訓練を受け、帰国した者が母国でテロを起こす可能性が指摘されているが、日本人にもそのような事例がないとは言えない。実際、テロ組織のリーダー が、帰国後のテロを奨励するメッセージを流している。