世代交代進む日本のCEO、ガバナンスに新風-株主との距離にも変化
全ての日本企業がガバナンス改革に積極的なわけではない。関西経済連合会は昨年9月にまとめた提言で、政策保有株式の縮減や独立社外取締役比率の引き上げなどコーポレート・ガバナンス・コードが求める項目について、一律の適用は望ましくないと政府に修正を求めている。
取締役会の多様性という点でも日本は欧米に見劣りしており、独立社外取締役の比率は45%と米国の86%、欧州の69%を下回る。早稲田大学大学院経営管理研究科の佐藤克宏教授は、取締役会では「異質なものの健全なぶつかり合い」が必要とした上で、まだ多くの日本企業ではそれが欠けていると言う。
ただ、経営者の若返りが取締役会の多様性の面でもポジティブな作用をもたらしつつあるようだ。ブルームバーグのデータによると、経営者が若い企業の方が多様性の確保にわずかながらでも積極的であることが分かる。
資産や家計の管理ツールを提供するマネーフォワードの辻庸介社長(47)は、同社のビジネスモデルは日本では新しく、欧米投資家の資金を呼び込む必要があったと説明。そのためには、強力なガバナンスを目指すことは当然で、上場以前から社外取締役の知見は成長を目指す上で役に立ったと語った。
東証の一連の改革を推進する「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」のメンバーでもあるマネクスGの松本氏も、従来は生え抜きの考え方が強くあったが、「最近は社外取締役の意見を聞こうという会社経営者が増えた。大きな変化だ」と受け止める。
さらに松本氏は、男性偏重、年功序列の人的資源配分、巨大に積み上がる内部留保、非効率な生産要素にメスを入れることで生産性を上げることが重要だと強調。「ヒト・モノ・カネの経営の3要素が最適配置されていない。最適配置が進めば、日本企業はまだまだ成長の余地がある」と見ている。
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Hideyuki Sano