世代交代進む日本のCEO、ガバナンスに新風-株主との距離にも変化
実際、情報開示や取締役会の多様性、新技術の採用などの点で若手のCEOが積極的に改革を進めている例は少なくない。CEOの発想の変化は日本のポジティブな変化の一つであり、ジェイコブス氏は「株式市場が活気に満ち、ダイナミックであることは国益にかなう」との認識が広がっていることの表れだとみる。
ガバナンス改革への意識は、今月末にかけて開催が相次ぐ株主総会を前に経営者の間でさらに高まりそうだ。ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジスト、ブルース・カーク氏は経営者が自身の取締役選任に対する賛成率を気にするようになってきており、総会シーズンはガバナンス改革への関心をさらに強めるだろうと指摘した。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストも5月末のリポートで、決算で企業改革の加速を確認したことは長期的に日本株をサポートするとの見方を示し、幾つかの注目企業を挙げた。その1社がリクルートHで、ネットキャッシュ削減のコミットメントに注目する。リクルートHは49歳の出木場久征氏が21年から代表取締役を務め、TOPIX500銘柄の中でも若い経営者の部類に入る。
利益成長率の上振れが顕著な三越伊勢丹も西原氏が注目する1社だ。江戸時代の1673年創業の呉服店「越後屋」がルーツで、百貨店不況から株価の低迷が長年続いたが、21年に就任した細谷敏幸氏(59)が経営改革に取り組んだ結果、大幅な増益を続けている。同社の時価総額は細谷氏就任以降に約4倍となり、5月には8年ぶりにオンライン衣料販売大手の新興企業ZOZOを上回った。
西原氏はトヨタにも改革の進展が見えるとしている。同社は昨年4月、佐藤恒治氏(54)がCEOに就き、その後過去最大の自社株買いを発表するなど投資家に変化を印象付けた。
しかし、伝統的に年功序列が重視されてきた日本では企業トップの年齢層は依然として他の国よりも高く、女性CEOの登用ではさらに遅れが目立つ。