パイナップルから植物性レザーを、セレブのためではないサステナブル素材
「パイナップルを素材として選び、そこから植物性レザーとして使える素材か結論を出すまでに、1年半ほど時間を要しました。ただし、パイナップルにこだわっているわけではなく、ココナッツの殻やバナナの茎など他の素材も検討中です」 さらに、パイナップルハイドは、牛革と比べて製造過程における環境負荷が低いという。 「レザーの製造過程における二酸化炭素排出量を比べたときに、牛革とパイナップルハイドは、後者はそれを40分の1に抑えることができます」
小学校6年間の使用に耐えうる素材
ここで再び、Viva Techのブースで目に留まったランドセルに話題を戻す。
ランドセルは、6年間を通じて毎日のように使われるため、耐久性を特に要する製品である。耐久性に優れる動物性レザーは向いているが、通学時の雨露にぬれて、そのまま放置されることもあるだろう。耐水性という点では植物性レザーに利点があるという。 「パイナップルハイドは、植物性素材で本革と比べて水に強いため、手入れなしでも10年間は色褪せしません。かつ、小学校の6年間に耐えうる品質を保持しています」
パイナップルハイドは、高温多湿の環境で1年ほど耐久性を試すジャングルテストなどを経て品質の向上を図ってきたが、試行錯誤も多かった。
「ランドセルはもちろん車のインテリア素材などとして使われるには、高温・高湿度の過酷な状況でも耐えうる高い基準をクリアする必要があります。その品質まで持っていくことが難しかったです」
現在では、ランドセルの他に、ソファーなど家具の素材としても需要があるという。レストランなどからは、その本来の機能性に加えて、サステナブルな素材を使っているという面白さからも興味を持たれることが多いそうだ。
サステナブルは「高価で特別」なものではない
ヴィーガンレザー市場は急速に発展している。そのなかで「2050年までに、世界のレザー市場の1パーセントをヴィーガンレザーにしたい」とジムさんは話す。 現在ピールラボは、日本を中心に世界60社以上と取引をしている。仕入れるパイナップルの葉は東南アジアが主。レザーの販路としては、現在はまずアフリカと中央アメリカを視野に入れており、この取材のすぐ前の週も、ジムさんはアフリカに出張中だった。 「アフリカの場合、現地では使われるのは動物性レザーがほとんどです。なぜならコストが一番安いから。アフリカにおいては、合成皮革も結局は輸入品になるため、価格が高くなってしまうんです」 パイナップル農家とのつながりや、パイナップルレザーの販路など、アフリカでの活動はまだまだこれからだが、可能性を探る。
「サステナブルな素材は、セレブや意識の高い人が、わざわざ高いお金を出して購入するというイメージが未だに付きまといます。しかしその偏見を壊し、誰もが手にできる当たり前の素材にしていきたい」 石油由来の合成皮革が自然と私たちの生活に溶け込んだように、ヴィーガンレザーが当たり前となる時代も近いかもしれない。