きっかけはコンビニのバイト 流通から社会の困りごとを解決する「サプライチェーン」の研究とは
学習院大学経済学部経営学科の河合亜矢子教授は、サプライチェーン・マネジメントを研究しています。「サプライチェーン」とは、モノやサービスが供給源から顧客に届くまでのプロセス全体のことです。どんな研究なのか、その面白さはどこにあるのかを聞きました。(写真中央=教室で学生の質問を受ける河合教授。本人提供) 【写真】研究活動で商品の分類をしている学生。「自分で問題を発見して考えることが大事」と河合教授
顧客に届くプロセスを最適化する
モノやサービスが顧客に届くまでには、メーカー、物流会社、小売店など、いろいろな会社や組織が関わっています。サプライチェーンの流れを調整し、価値を最大化するのが「サプライチェーン・マネジメント」です。特に大事なのは、「長期的な視野を持ってサプライチェーンを見ること」と河合教授は言います。 「日本では自分の会社の原材料調達から販売までを考えるのがサプライチェーン・マネジメントだと思っている人が多いのですが、自社の短期的な利益のためではなく、長期的な視野で取引先も含めたサプライチェーン全体の価値を最大化するための活動なのです。特に近年では、地球環境を守るとか、より良い社会をつくるといった視点も重要視されるようになっています」 サプライチェーンには、原材料、生産、物流、情報、お金の流れなど、さまざまな分野が関わっています。研究者は、お金の流れの最適化、重工業分野の最適化、貿易の最適化など、それぞれの専門を持っています。河合教授は、流通業のサプライチェーン・マネジメントを中心に研究しています。消費者が小売店で買う食品や衣料品などの流れです。
きっかけは、コンビニでのアルバイト
なぜサプライチェーンに興味を持ったのでしょうか。河合教授は大学時代、コンビニでアルバイトをしていました。店で導入されていたのが、当時はまだ珍しかったPOSシステムでした。商品のバーコードを読み取って、会計、在庫、発注などを管理するシステムです。 「たとえば、近くの小学校の運動会の予定が入力されていると、お菓子や飲み物を多めに発注するように勧めてきます。発注した商品は時間通りにきちんと届くし、すごい仕組みだな、どうなっているんだろうと興味を持ちました」(河合教授) 大学では経営システムの研究室に入り、卒業後は物流企業に就職しました。その企業では、現場勤務を経て、業務を回すための情報システムの設計・導入を2年ほど担当しました。 「会社の中を丸裸にするような作業で、どこに問題があるかが見えるのです。でも、自分の知識では改善策までは出せません。もう一回勉強したら解決策がわかるのではないかと思って大学院に入り、そのまま研究の沼にはまって(笑)、今に至ります」