新NISAは不便になることも? 枯渇させない「老後資金」の使い方
「使いながら運用する」で取り崩しをゆるやかに
以上を踏まえたうえで、どう下山していくかを考えます。 極意は、「使いながら運用をする時期」を設けることにあります。ひと世代前、つまり現在の高齢世代は、登山も下山も現金のみで行なう形が主流でした。現役時代は預金で貯蓄し、65歳以降は、貯蓄と退職金を合わせた資産から毎月定額で取り崩す方式です。寿命を80代半ばと考えれば、65歳以降の20年間、資産の寿命も十分に保たせることができました。 しかし皆さんの世代は、二つの点で様変わりしています。一つは、以前より運用という手段が浸透していること。投資に取り組む方が増え、退職時には現金のみならず、有価証券でも資産を持つ方が多くなっていると思われます。 もう一つは、寿命が延伸していることです。人生100年時代とあって、老後が30年以上続く可能性があります。ひと世代前と同じペースで取り崩していたら、資産は早々に枯渇します。そこで、運用によって下山をゆるやかにすることが必要となります。 上の図では、登山=上り坂のあとに、ゆるやかな下り坂の時期が挟まれていますね。これが「使いながら運用する時期」です。「使いながら運用する」とは具体的にどういうことか。まず退職時点で、積み立てをストップします。しかし運用はそのまま継続。そして有価証券を少しずつ売却し、生活費に充てていきます。言わば、投資から部分撤退していくプロセスです。 対して「使うだけの時代」はいわば完全撤退後です。80代、90代といよいよ高齢になると、運用は知力・体力上、負担になると考えられるからです。図ではその時期を80歳としていますが、あくまで目安です。ご自身の余力や目標額などを考えあわせたうえで判断しましょう。 当然のことながら、最終地点の「100歳」も、全員に当てはまる数字ではありません。誰しも、自分が何歳まで生きるかを知ることはできません。「だから、老後のプランが立てにくい」と、多くの方が悩まれるポイントでもあります。 しかしこればかりは、「わからない」以外の答えは出ません。ならば、無駄に考え続けるよりも「100歳まで生きる前提」で計画を立ててしまいましょう。最終地点を100歳と設定したら、そこからは、逆算で考えていきます。