連休明けの「会社に行きたくない」は要注意…産業医が指摘「急性のメンタル不調」の放置で起きるリスク
正月休みが終わり、仕事が始まって「会社に行きたくない」と強く感じる人もいる。産業医の薮野淳也さんは「精神的な不調で会社を休むのは良くないと思いがちだが、体の病気も心の病気も同じ。適応障害などを放っておくと、他の精神疾患になりかねない」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、薮野淳也『産業医が教える 会社の休み方』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。 ■メンタル不調の代表格「適応障害」を甘く見てはいけない 「適応障害」はストレス反応として起こる“急性”のメンタル不調であって、クリニックで診ている患者さんは、皆さん、3カ月ほどで治療を卒業していきます。早い人であれば、1カ月や2カ月で良くなり、元の生活に戻ることができます。 ただし、何の対処もせずにいると、脳そのものが疲弊して他の精神疾患に移っていくこともあるので、軽んじてはいけません。病気ですから、やっぱり治療が必要なのです。その第一歩は、適切なタイミングで「休む」ということです。 適応障害になると、周りから見ても「ちょっとおかしいな」「何かいつもと違うな」と気づくところが出てきます。 元気がなさそう、イライラしてそう、疲れてそうといったことのほか、睡眠が乱れて朝決まった時間に起きられないために遅刻が増えたり、無断欠勤が増えたり、その反面、残業や休日出勤が不釣り合いに増えたり。また、髪型や服装などの見た目に「あれ?」という部分が出てくることもあります。 仕事のなかでは、ミスが目立つようになったり、報告や相談、職場での会話がなくなったり、返事が単調になったり、逆に多弁になったりという変化も、メンタル不調のサインの一つです。 ■社員が休むことは「権利」であり、企業にとっては「義務」 私は産業医として管理職の方を対象にメンタルヘルスケアセミナーをさせていただくことがあります。そういうときには「気づいて、聴いて、つなげてほしい」と、いつもお願いしています。 身近な上司の方は、メンタル不調を早期発見する要。部下の様子が「何かいつもと違う」と気づいて、それが業務に影響しているようでしたら、まずは本人からじっくり話を聴いて、人事や産業医につなげていただきたいのです。 適応障害の場合、ストレスから離れることが治療の第一歩であり、休むことが治療になる、と書きました。それでも、休むという選択肢をとることは勇気のいることだと思います。特に数日間の有給休暇ではなく、月単位の休職となるとためらう人は多いでしょう。 でも、働く人にとっては体調を整えるために休むことは「権利」であり、企業にとっては従業員の健康を守るために休ませることは「義務」なのです。