【高校サッカー】新潟明訓が7度目全国切符「追加タイムは40分に感じた」坂本和也監督
<全国高校サッカー選手権:新潟県大会決勝:新潟明訓1-0開志学園JSC>◇10日◇デンカS 新潟明訓が開志学園JSCを1-0で下し、9大会ぶり7度目の優勝を飾った。試合開始39秒、MF鈴木快空(2年)が右ロングスローから電光石火の決勝点を挙げた。コーチから監督に昇格した20年、22年と準優勝に終わっていた坂本和也監督(39)にとっては“三度目の正直”で初タイトル獲得となった。今春の県総体4回戦負けだったチームは「堅守柔攻(堅守と柔軟な攻撃)」をアップデートさせ、初戦の3回戦から全5試合無失点で新潟県を制した。 新潟明訓1点リードで迎えた後半追加タイムは、6分。電光掲示板の時間表示は消え、坂本監督は握りしめたストップウオッチに何度も目をやる。最後のセットプレーを跳ね返し試合終了のホイッスルが鳴ると、坂本監督はコーチ陣と抱き合い、男泣きした。 「追加タイムは、もう、40分に感じた。今年でダメなら身を引く覚悟だった。(3年生は)最弱世代といわれたが、ちゃんとやれば高校生は伸びるんだ、というのを彼らが証明してくれた」 試合開始39秒で鈴木が右ロングスローのこぼれ球を押し込んだ。「独特の雰囲気の中、ゲームの入りが重要だった」。狙い通りの形で先制。その後は堅守をベースに、速攻と遅攻を柔軟に使い分け、勝ちパターンに持ち込んだ。 坂本監督は社会人チームでプレーしながら08年に新潟明訓のコーチに就任。26歳から新潟医療福祉大に通って保健体育の教員免許を取得して同校教員となり、20年に監督に昇格した。そこから2度(20、22年)決勝進出も、帝京長岡と日本文理に敗れていた。監督就任5年目で巡ってきた3度目の挑戦。悲願を達成した。 この日の対戦相手にも縁があった。東京・城西大城西からプロを目指し、開志学園JSCの兄貴分であるサッカーの総合専門学校JAPANサッカーカレッジのトライアウトを受験。敵将の宮本文博監督(56)にスカウトされて、サッカー専攻科で3年間プレーした経験がある。宮本監督をはじめ、スタッフも顔なじみ。試合後は「よくここまで勝てるチームにしたな。全国も頑張れ」とエールを受けた。 今春は県総体4回戦負けからスタート。それでも堅守と柔軟な攻めに磨きをかけ、無失点で全国切符(12月28日開幕)を手にした。「新潟県代表は勝たなきゃいけない」。何度、倒されても立ち上がってきた指揮官が率いる新潟明訓が、全国で旋風を巻き起こす。【小林忠】 新潟明訓 先発したGK加藤俐功(3年)が後半5分に相手選手と接触して負傷交代。その後は第2GK石井伶和(3年)がゴールを守り、DF福原快成(3年)DF加藤祐羽(2年)のセンターバック2人と連係して無失点で優勝した。急きょの出場にも動じなかった背番号17は「ファーストプレーのゴールキックで波に乗れた。俐功の分も、という気持ちはあった。役割は果たせた」と胸を張った。 開志学園JSC エースのFW阿部日夏太(3年)は、前半だけで3本のシュートを放つなど新潟明訓ゴールをおびやかした。だが、後半5分に相手GKと接触し、一発退場。「自分のせいで負けた。相手GKにも、みんなに申し訳ない」と大粒の涙を流した。 「俺の大会にする」と意気込んで臨んだ今大会。初戦の3回戦から得点を重ね、準々決勝からは2戦連続ハットトリック。決勝までの全4試合で14ゴールをマークし、力を存分に発揮した。卒業後は関東の強豪大に進学する。「プロ入り、日本代表を目指す。活躍して学校の名を広めたい」とした。