居酒屋のチンチロは本当にお得? 現役東大生が「確率」を実際に計算してたどりついた答え
数学を使って世の中の仕組みを知ることで、物事を見る視野が広がります。現役東大生の永田耕作さんが数学の魅力について解説する連載『東大式「新・教養としての数学」』。今回のテーマは「居酒屋のチンチロの確率」です。 ■居酒屋でよくある「チンチロ」とは? 居酒屋という場でよくある、「チンチロ」というゲームを皆さんはご存じでしょうか? チンチロとは、正式名称をチンチロリンという大衆的なゲームの1つであり、一般的に複数個のサイコロと丼を用いて行われます。サイコロを振って出た目によって作られた役の強さを競うゲームですが、そのルールを少し応用して、多くの居酒屋で楽しまれているのです。
お店にもよりますが、多くの場合は「サイコロを2つ同時に振り、結果によってドリンクの量や値段が変わる」というルールが採用されています。例えば以下のとおりです。 出た目が同じ(ゾロ目):ドリンクが無料になる 出た目の和が偶数:ドリンクが半額になる 出た目の和が奇数:ドリンクの量が2倍になり、値段も2倍になる このルールの場合、お客さん側の視点で考えれば、 ・ゾロ目ならタダ ・偶数でもお得 ・奇数でも実質同じ値段
であるため、明らかにお客さんが得をするルールのように見えます。しかしこのシステムは、実はお店とお客さんの両方が得をする、つまり「Win-Win」のシステムになっているのです。 ビジネスの場でもとても重要になる、この「どちらにとっても利益がある」という構図が居酒屋のチンチロでいかにして実現するのか。具体的に計算をしてみましょう。 サイコロを2つ振ったときに「ゾロ目」「和が偶数」「和が奇数」となる確率をまず求めます。サイコロの出目は1から6までで6種類あることから、2つのサイコロの出目の組み合わせは6×6の36通りであることがわかります。
その中で2つの出目が同じ(ゾロ目)となるのは、 (1,1)(2,2)(3,3)(4,4)(5,5)(6,6) の6通りであるため、ゾロ目になる確率は、 6/36=1/6 となります。同様に、ゾロ目以外で和が偶数になるのは出目が、 (1,3)(1,5)(2,4)(2,6)(3,1)(3,5)(4,2)(4,6)(5,1)(5,3)(6,2)(6,4) の12通りであるため、和が偶数となる確率は12/36=1/3より「3分の1」となります。奇数も同様に考えてもよいですが、サイコロの出目の和は必ず偶数(ゾロ目も含む)か奇数のどちらかになるため、全体を表す確率1から、「3分の1」と「6分の1」の両方を引くことで求めることができます。