錦鯉、バイきんぐ、ザコシ……「芸人の墓場」と呼ばれた事務所で、売れっ子を量産する仕掛け人
まもなく決勝を迎える笑いの祭典「M-1グランプリ2021」で、昨年に引き続き注目を集めるコンビ・錦鯉。史上最年長ファイナリストとして大きな爪痕を残し、今ではテレビで見ない日はないほどの人気を獲得した彼らの事務所がSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)だ。かつては所属先を解雇された芸人たちが最後に行き着く「墓場」とも呼ばれた。錦鯉やバイきんぐなどを見いだし、人気事務所に押し上げた一人のマネージャーの存在を追う。(取材・文:キンマサタカ/撮影:高須力/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「非情な男」が錦鯉ブレークの立役者
今週末のM-1決勝に、今年も駒を進めた錦鯉。昨年のM-1決勝では4位に終わったが、年齢(長谷川雅紀49歳、渡辺隆42歳/当時)でも注目を集めた。50歳目前での決勝進出は初の快挙だったからだ。20代でお笑いを始めた長谷川が、現事務所のSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)に所属したのは34歳。SMAには錦鯉のような遅咲きの芸人が多く所属する。 昨年まで世間からノーマークだった二人をブレークさせ、その他にもバイきんぐやハリウッドザコシショウ、アキラ100%といった賞レース王者が輩出したSMA。他所から解雇された芸人を「再生」したマネジメント術は大きな注目を集めた。 その立役者が部長の平井精一(53)だ。
「錦鯉は売れる要素を備えていたと思います」 30年近く芸人を見てきた平井は、錦鯉と売れている芸人に共通点があると話す。その一つが「スキがある」ことだ。 「お笑いの偏差値が高いと、自分でオチまで用意してしまう。それも一つの正解だと思いますが、番組だったらそこで展開が終わってしまう。でも、長谷川はスキだらけだから、司会者や共演者に突っ込まれてさらに笑いが生まれる。そうすると制作側もまた呼びたくなるんです」 キャッチボールの中でさらに大きな笑いを生む、それが長く残る秘訣だと考えている。 「あとは笑いに対して真面目なこと。長谷川や渡辺はお笑いに対するしっかりとした意見を持っているから、建設的な話し合いができたんです」