サステナブルバッグブランド"AIRPAQ":車の廃材が生み出す新たな価値
ー廃材の収集から製品化までの過程を説明していただけますか。 商品製作は、まず素材の調達から始まります。シートベルトとエアバッグはルーマニアの協力工場から、バックルはドイツのケルン郊外の協力スクラップヤードから入手します。協力工場では、車に取り付ける前に「不良品」として廃棄される予定のシートベルトとエアバッグを回収します。車の保安部品は品質基準が非常に厳しく、想像以上に多くの不良品が発生するのです。従来なら捨てられていたこれらの素材を、AIRPAQは再活用しています。
次に、調達したエアバッグを洗浄・染色します。この工程で生地が柔らかくなり、独特の風合いに仕上がります。
その後、製品一つに必要な生地の量をはかり、採寸した生地からパーツをカットします。
元のエアバッグ素材の形はバラバラなので、さまざまな素材からパーツを切り出します。そのため、AIRPAQの商品は一つひとつ異なる表情を持つ、世界に一つだけの製品となります。
各パーツはミシンで縫製され、組み合わされます。
最後に、シートベルトやバックルなど、さまざまな車の廃棄パーツを組み合わせて、アップサイクルされたバッグが完成します。
ー製品のデザインにおいてもっとも重視していることは何でしょうか。 実用性だけでなく、おしゃれとしても普段から使ってもらえる商品デザインであることを重視しています。単なる環境配慮型の製品ではなく、魅力のある商品デザインによって、車の廃材から新たな価値を生み出すことを考えています。 また、車の廃材からアップサイクルされたことが「よく見るとわかる」デザインにもなっています。たとえばAIRPAQのロゴのマークは車のシフトレバーをデフォルメしたデザインになっています。 また、ロールトップバックパックの中央部分には丸く刺繍が施されていますが、これは車のハンドルに取り付けられたエアバッグをイメージしています。
ーお客様から特に印象的なフィードバックとは? 一番は電車の中でのエピソードです。AIRPAQのロールトップバックパックには一番のアイコンとして、開口部分の留め具にシートベルトのバックルが使われているのですが、電車の席で膝の上にAIRPAQを抱えると、ちょうどそのバックル部分が前に立っている人に見えるようになります。 その時に、前に立っている人がじっとバックル部分を見ていて、おそらく「なんでこの人のバッグにはシートベルトが??」と思われているのだろうなと感じて、人の心に留まったように思いうれしくなりました。というお話を伺ったことがあります。 このエピソードがとても印象に残っています。 ーサステナブル製造を実現するうえでの課題は何だったでしょうか。 一番の課題はエアバッグ素材の再活用です。協力工場から調達する素材は本来車の部品のためのものです。そのため、車に取り付けるための形状・縫製をしており、バッグの生地に再活用するために、その縫製をほどき、また平たい生地の状態に戻す必要があります。 さらに、車のメーカーや車種によってさまざまな大きさがあるエアバッグをバックパックに使用できるパーツに採寸・裁断をする際にも、無駄が発生しないように計算しながら生地を活用しなければなりません。 このような作業ができる縫製工場やパートナーを見つけることは困難でしたが、AIRPAQではルーマニアに生産パートナーを得ることができ、現行商品の生産を共に行っています。