西武ライオンズの改革を進めた広報部長の「シン・広報戦略」、窯焼きピザにロン毛商品…数々の打ち手の裏側とは
今年の春からは、広報部主体で西武ライオンズ公式SNSの運用を始めた。 「広報やマーケティングに用いられる、『PESOモデル』というメディア戦略のフォーマットがあります。P=ペイドメディア(Paid Media)、E=アーンドメディア(Earned Media)、S=シェアードメディア(Shared Media)、O=オウンドメディア(Owned Media)を活用してメディアを有機的に連動させないとコミュニケーション効果は見込めないと考えました」
■広報部は忍者のように、気の利いた存在でありたい 今年9月には、大の西武ファンとして知られるパリ五輪フェンシング男子フルーレ団体で金メダルを獲得した松山恭助さんとのコラボイベントを実現した。松山選手は兼ねてから始球式をするのが夢であることをSNSなどで発信しており、金メダルの受賞後、球団の公式SNSがすぐにオファーをした。 この球団のスピード感ある動きがSNSで話題を呼び、当日は双方のファンがベルーナドームを満員にした。お互いに新たなファン層の開拓につながる好事例になったという。そして、より一層PESOモデルを運用しやすい体制を構築するべく、今年の10月からは公式Webサイトや宣伝部門も広報部の領域に加わった。
赤坂氏は、広報の仕事を「忍者」と表す。 「広報はシチュエーションに応じて、情報を提供したり収集したりするのはもちろん、周りを探ったり、時には世論や誤解と戦ったりと、さまざまな動きをしなくてはなりません。展開を先回って予測し、経営の判断材料を準備するという、かゆいところに手が届く気の利いた存在でありたいと考えています」 そんな赤坂氏の今後の展望は──。 「西武ライオンズの事業の2本柱はプロ野球事業と貸し会場事業です。どちらも、非日常のライブやエンターテインメントを提供しています。私は新規事業に携わった経験もあるので、これらに次ぐ3本目の柱を社内の仲間とともにつくりたいと思っています。広報の広聴機能(社内外の声を集めて反映すること)を重視しつつも、顧客の五感を揺さぶるプライスレスな価値創造の提供を目指して挑戦します」
せきねみき :ライター・コラムニスト・編集者