西武ライオンズの改革を進めた広報部長の「シン・広報戦略」、窯焼きピザにロン毛商品…数々の打ち手の裏側とは
「社長が、社員ではなくマスコミ各社に向けて年頭訓示をするのです。続いて各メディアの担当者が順番に自己紹介をしてくれます。率直に『異空間に来てしまった』と思いました」 プロのスポーツ広報は、自ら動かずとも番記者が取材にくる。赤坂氏は「この環境では広報部員のスキルアップは難しい」と感じたという。 「これまで、例えばホテルの広報では、1本のリリースに対して切り口を10個考えて必死にメディアキャラバン(メディアや記者への情報提供)をしていました。一方でプロスポーツはそこまでせずとも記事を出してもらえるので、『載って当然』という感覚に陥ってしまいます。広報の立場が強いため、部員が勘違いしてしまう可能性すらあると感じました」
そこで赤坂氏は、あえて広報部長に就任してからも一部員として行動することに。広報本来の目的や意義を自ら動いて伝えながら、意識改革を進めていった。 「記者の方は、情報を持っていて連絡を取りやすい人物にまずコンタクトをとります。記者の方が記事を書きやすいよう、問われた内容だけでなく、球界・スポーツ界のトレンドや、西武ライオンズの状況を丁寧に伝えることを徹底しました」 赤坂氏も諸先輩を見て、広報の仕事は単にメディアへ情報を出すことではなく、自分が属する組織を取り巻く方々と良好な関係を構築することだと教わったように、球団広報内でも自身の背中で語り続けたという。
広報部員の意識改革と並行して、ファンクラブの若返りや新規ファン獲得を図りたいと考えた赤坂氏は、自身の企業広報の経験を活かして「シン・広報戦略」を打ち出した。 「野球チームがつねに強くあるには、選手たちに十分な報酬を払わなければなりません。そのために事業として利益を出す必要がありました。私たちに必要なのは、“営業的な広報”。慣例にならって試合結果や選手の自主トレなどを公開するばかりではいけないと確信しました」